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梅雨時期の大雨の日の夜だった。
________君と出会ったのは。
買い物帰りの一本道
何度も通って見ていた景色が、いつもとは違って見えた。
雨の音が真っ白な傘を鳴らして、アスファルトの匂いが漂う。
周りの音はかき消され
着ていた長いスカートも、びしょ濡れで冷たい感触にひやっとする。
こんな日も嫌いじゃない。
ただ、雨の日に買い物に行ってしまったのは失敗だと思った。
重い荷物を片手にかかえ
早く帰宅しようと足を進める。
.
小さいアパートに着き
鉄の階段をカンカンっと音を立てて上る。
ふと、階段の隙間から下に人が見えたような気がした。
足を止めて覗くと、赤い何かが見える。
その何かを確かめたくて、下へとゆっくり降りた。
大雨の日だというのに
赤いパーカーのフードをかぶり、傘もささず座り込んでいる人がいる。
生きているのか、死んでいるのか確認はできない。
自分でもよく分からないが
いつの間にかその人に傘をさしてあげていた。
しばらくして、ぴくっと頭が小さく動く。
腕が動き、パーカーのフードを取り
ようやく顔を出した。
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作者名:七瀬 | 作成日時:2020年11月27日 22時