テーマ別短編集１【東京シンデレラ】(JUMP×JUMP) (ページ12)

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秘密のバルコニー５ページ12

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長かった...というより、長く感じた休みも、もう終わり。

俺たちの遊びも、終わり。

日曜日、夕方。

太陽も傾いて、部屋がほんのりオレンジに染まっても、なんとなくだらだら話していた。

死にたくない、でも心中はしたい？

なに言ってるんだろう、自分でもよくわからない。

いのちゃんも同じ気持ちなのだろう。

心中するという計画は、どんどん具体的になってもやっぱり宙ぶらりんのまま。

夕暮れ時は、嫌いだ。

子供の頃、かくれんぼで見つけてもらえなかった時のことを思い出すから。

でも同時に暖かい気持ちにもなるのは、
その時呼びに来たお母さんの声が、とてもあったかかったからなんだろう。

カラスが鳴いて、いのちゃんがなにかを話した。

カラスの声は聞こえたけどいのちゃんの声は聞こえなかった。

聞き返すのもめんどくさく、なにも反応しなかったけれど、大したことでもなかったのかなにも言ってこない。

あの時、かくれんぼで見つけてもらえなかったとき、その感覚を妙にリアルに思い出して体を震わせる。

忘れようとしても、小さく、長く、嫌な気持ちはすこぶったまま。

「ゆーと？」

覗く君の顔。

どこかお母さんににている太陽の香り。

気づいた。

ああ、誰にも見つけられなくて、誰かに見つけてほしくて、俺は生きていたのか。

君に見つけてほしくて、君に抱き締められたくて、あんなことを言ったのだろう。

それなら...

「...心中、やめよっか。」

驚いて、いのちゃんの顔を見る。

言おうとしていたことと、全く同じ。

「悲劇なんかじゃない。誰かに認められなくてもいい、俺たち、やってけるよ。」

俺は、ずっとかくれんぼをしていた。

自分から隠れるくせに、誰かに見つけてほしくて、もういいよって、声が枯れるくらい叫んでいた。

「ああ、裕翔。どうしてあなたは裕翔なの？」

「...こういう名前をつけられたから、だよ。」

そんな下らないことを言って、クスクス笑った。

ー手がしわしわになるまで一緒にいよう。

ーfinー