第78話 ページ10
「まあ!」
しばらく待っていると通路の方から白い毛を持つヤギを彷彿とさせる女性が驚いた顔を声を漏らしていた。
「こ、こんにちは」
「あなた怪我はない!?」
何を言って良いかわからず挨拶をすると、ハッとした彼女はすぐに駆け付けて穴に落とされた俺の心配してくれた。
「とりあえずは大丈夫です」
「それは良かったわ」
心から安心してくれているようだ。もしかしたら、この人がFloweyが口にしていたTorielという女性なのだろうか?
「俺はAと言います。貴女のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「私はTorielよ!貴方はAって…………えっ、ごめんなさい、Aって言ったかしら?」
「はい、Aです」
聞き返したTorielに再度名前を告げれば、Torielは少し難しい顔をして俺を見ていた。
「良い名前だわ。あなたは……デッサンが好きなのね」
俺が手にしているスケッチブックとペンを見るとそう言った。その時の眼差しは、単純な感心の眼差しではなかった。まるで、失ったものを懐かしむような眼差しというべきだろう。
「貴方、これから行く宛はあるかしら?」
「できれば家まで戻りたいんですけど……」
「……えぇ、気持ちはわかるわ。詳しいことは私の家で説明するから私の後に着いてきて」
「は、はい」
もしかして、ここから出るのは実は難しいのではないんだろうか……。でなければ、僕の発言に対して、あんなに悲しい表情をするわけがない。
それからの道のりは不可解なものだった。まるで意味をなさない仕組みもあれば、トゲトゲの道があったり、予想していた風景から乖離していた。
「ここが私の家よ」
「立派な家ですね……」
「実はね、3日前にも貴方のように人間の子が来たのよ。紹介するわね」
そんなに人間が落ちてくるのか?それとも、俺みたいに怪しい連中に落とされたのか。
家の中に入れば、なんだか懐かしい匂いがした。だけど、はじめてのはずだから何だか不思議な気分になる。
「この部屋にいるわ、Frisk開けるわね」
Friskという子にに声をかけてドアのノックするが、返事はなかった。
「Frisk……?」
返事がないためTorielは部屋のドアを開けた。
「あらら……」
「寝ちゃっていますね」
「自己紹介はFriskが起きてからで良いかしら?」
「もちろんです、よく眠っているみたいなので、起こすのは悪いですからね」
そう返事をすると、Torielは部屋のドアをゆっくりと閉めた。
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作者名:アルフ | 作成日時:2020年1月19日 18時