第110話 ページ42
「Aは確か……帰るべき場所があるのよね」
Torielさんは俺を見て言う。人間だった頃の俺がバリアから出られたら帰る家があると告げていたからだ。
「えっ……Aは一緒にいられないの?」
Asrielが不安そうに俺を見つめて問いかけてくる。確かにTorielさんの言う通り、俺には帰るべき家があるし待っている家族もいる。
「そのことなんですが、一つ提案がありまして」
「て、提案かい?」
Asgoreさんの言葉に俺は頷く。
「あの……みなさん行く宛が決まってないなら、俺の家に来ますか?」
ある程度は決めていた。みんな、ずっと地下世界にいたのだから、地上に住むところは恐らくないだろう。だから、環境が整う間はウチの家で住ませてあげたい。
地下世界で彷徨っていた俺に暮らしを提供してくれた大切な家族なんだから。
「え、本当にいいのかしら」
「はい、俺もみんなにお世話になったので恩返しさせてください」
親には土下座して頼もう。そもそも俺がAであることを説明するところから始まるんだけどね。
「Dreemurrさん、このままだとAsrielやAに申し訳ないから、友達からなら……やり直しても良いわ」
TorielさんはAsgoreさんの方を見ると困ったような表情でそう告げた。その言葉にAsgoreさんは声にならない声を出していた。
「T、Tori……本当に良いのかい!?」
「今は、この子達がいるから。けど私のことToriって呼ばないで」
おお……やっぱり怖い……。
その言葉にAsgoreは嬉しさと悲しさが混ざった表情になっていた。それを見せられている俺も複雑な気持ちになるけど、関係修復の第一歩にはなるだろうか……?
「じゃ、じゃあ!俺の後に付いてきて!」
俺はAsrielと手を繋いだまま先導して歩き出した。TorielさんとAsgoreさんの仲は俺たち子供3人で取り持とう。Frisk、もちろん君も強制だ!
「ありがとうA」
「な、何がだ?」
「僕達のことを大切に考えてくれてて」
Asrielのその言葉に俺は微笑んで返した。
ぎゅっと外れないようにAsrielの手を握り直す。
その手首には、いつの間にか千切れてしまっていたミサンガが結び直されている。もし、また離れ離れになることがあれば再び二人が巡り会うように導いて欲しいという願いを込めていた。
________ 新しい時代の幕開け
その当事者である俺たちは色々な問題に直面するだろう。けれど、みんながいれば乗り越えられる気がする。
もし、ツラくて挫けそうになっても隣にはAsrielがいる。そして、Asrielの隣には俺がいるからお互いを支え合っていきたい。
13人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アルフ | 作成日時:2020年1月19日 18時