第74話 ページ4
マイホームに戻った俺はその日はずっと両親と話していた。正直、俺は両親からの愛を疑っていた。ずっと俺に何か隠し事をしている素振りがあって疑っていた。
けれど、一日中ずっと話していて俺はとても愛されていることを自覚した。だから、そんな両親を疑うわけにはいかない。
そうだ、何か親孝行がしたい。俺にできることは絵を描くこと。何かを描きたい。母が好きなひまわりを描こう。きっと少し外を歩けばひまわりが見つかるだろう。サプライズのために両親には黙っておこう。
俺はスケッチブックと鉛筆を手にこっそりと出かける。やっぱり外の空気は美味しい。入院していた頃も看護婦さんを付き添いに散歩くらいはしたことはあるけどね。でも、今は自由だ。
しばらく歩いていると公園に着いた。公園には花壇がありチューリップやガーベラにコスモスなど色んな花が咲いている。しかし、お目当てのひまわりはない。
「うーん、困ったなあ」
花壇をまじまじと見るように屈んで悩む。ひまわりは諦めて妥協するか、もう少しひまわりを探すべきかということを。
とりあえずはこの花壇に咲いている花を描こう。描きながら考えよう。それが良いに違いない。
花は色んな色があり描くと見応えが良い。一通り描いた絵を見てニッコリと頷く。
「おや、お花が好きなのかい?」
「え?」
突然と声をかけられて少し驚いたが、平静を保ちつつも振り返った。その先には、お金持ちそうなジェントルマンが立っていた。
「おや、花の絵を描いていたのかな?」
「はい、本当はひまわりを探していたんですが……」
「この辺りにひまわりはありませんね。代わりと言っては何ですが、ゴールデンフラワーと呼ばれる花ならばありますよ」
「ゴ、ゴールデンフラワー!」
とても気品のありそうな名前の花を聞いて心が躍る。それにひまわりが無いのならば、その花を描いてみるのが良いだろう。
「興味をもっていただけたんですね」
「はい!どこに咲いてるんですか!?」
「私が案内しますので、こちらの車にお乗りくださいませ!」
ジェントルマンはそういうと、公園の入り口付近に停まっていた高級車まで案内してくれて後部座席の扉を開けた。
「えぇ!?案内してくれるんですか!?」
「はい、花と絵を愛するあなた様にはその資格がございます」
「あ、ありがとうございます……」
そう言って俺は車に乗る。ジェントルマンは運転席に座ると俺の方にお茶を差し出してくれた。
「ずっと公園で絵を描いていたのならば、少しお疲れでしょう。どうぞお飲みください」
「そ、それじゃあいただきます!」
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作者名:アルフ | 作成日時:2020年1月19日 18時