第82話 ページ14
Friskが出て行ってから数日が経過した。Torielさんは少し元気になった……というよりも元気になったように振舞っているが、本人に自覚はないと思うが時折悲しそうな表情を見せる。
Torielさんはバタースコッチシナモンパイを作ってくれたので、テーブルに向かい合わせに座り一緒に食べる。
「前食べた時も思ったんですが美味しいですね」
「ふふ、ありがとう。そうね、何度も作ってきたから作り慣れてるってのもあるけど、やっぱり喜んでくれる家族の顔が見られるから……」
家族……。俺は絵に描いてあったTorielさんの子供らしき子を思い出した。けど、俺からは話を切り出しにくい。
「……その、前にあなたと同じ名前のモンスターの子がいるって言ったわよね」
「えっと、絵が描けるっていう」
「ええ、その子よ。その子は養子だったんだけど、その子と仲が良かった実の子もいて……」
「……この絵に描かれている子ですか?」
俺は壁に貼ってある一枚の絵に指差した。それにTorielさんはコクリと頷いた。
「ええ、Asrielって言うの」
「Torielさんに似て優しそうな子ですね」
「ふふ、確かに優しい子だったわ。モンスターのAが養子になる前、倒れていたAを連れてきて……その後も落ちてきた人間の子を連れてきてね」
優しさの塊みたいな子だったんだ。俺も会ってみたかったな。
「今は……そのAsrielは?」
「……死んでしまった。落ちてきた人間の子……冷たくなったCharaを人間の世界に送り届けている時に……」
「……え?」
Torielさんは溜まっていたものを吐き出すかのように瞳から涙を零していた。
「地上から戻ってきたAsrielは全身ボロボロで……すごく悲しかった……。私は二人の子を亡くして……」
Torielさんが過保護な理由はやはり子供を亡くしたからだったのか。
「ごめんなさいね、貴方にこんなこと言うべきじゃなかったのに……」
「い、いえ!むしろ頼りにしていただいて俺は嬉しいです」
ここに落ちてくる子は幼いのか、直ぐに出て行ってしまうからなのか、Torielさんはずっと悩みを打ち明けられずにいたのかもしれない。
きっとTorielさんが今こんな話をしたのはFriskのことが心配で心配で仕方がないんだろう。
このままじゃ良くない。
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作者名:アルフ | 作成日時:2020年1月19日 18時