第８０話 ページ12
Torielさんがテーブルにジュースを置くと、俺と向かい合うように座る。
「これから貴方にとって大切な話があるわ。貴方はとても落ち着いた子だから、きっと受け止めてくれるって思ってる」
「……大切な話？」
ジュースを一口飲もうとコップを手にしていたが、少し重たい空気を感じ取りコップから手を離した。
「えぇ。ここは地下世界で貴方は地上から落ちてきた」
「はい、その通りですね」
「貴方は地上に戻りたいと願うかもしれないけど、それはきっと貴方にはできない」
「きっと？」
なにやら含みのある言い方に対して、そこだけを復唱してTorielに意味を聞く。
「地下世界から地上に上がるには、境界線にあるバリアを抜けなければならないのよ」
「バリア……？」
「えぇ、このバリアがある限り私たちモンスターも貴方のような人間も越えることはできない」
人間もモンスターもバリアを越えることができないというのであれば、なぜ「きっとできない」とTorielは口にしたのだろうか……？
「けれど、１つだけ例外があるわ。……人間のソウルが7つあれば、バリアを破ることができるの」
「……７人の命」
そう聞き返すがTorielは何も言わなかった。つまり、肯定ということなんだろう。
「もう一つ方法があります」
「もう一つ？」
「えぇ、バリアは破れなくても、人間のソウルとモンスターのソウルが1つずつあればバリアを越えることができるのよ」
「……やめだ。どっちも現実的じゃない。それってつまり……誰かのソウルを無理にでも、ということだよな」
地上に出るのは諦めた方がいいのかもしれない。地下世界での暮らしを考えないとだけど、待ち続けているだろう両親を放っておくわけにもいかない。
「A、貴方がこれを聞いて地上に出ることを考え直すのは分かっていて、その上で更に説明しなくてはいけないことがあります」
「……つまり、これからが本題？」
「えぇ、貴方が落ちてきた場所からこのホームを含めるruinsは安全な場所ですが、この先にはバリアを破るために人間のソウルを集めている恐ろしい魔物が待っているわ」
モンスターはバリアを破って地上へ出ることを夢見ているのだな。けど、あいにく俺は自分の魂を見ず知らずの存在に差し出すほどお人好しではない。
「俺はここにいるよ」
「！！」
「けど、もし今後……バリアが破れることがあれば俺には帰る場所があるから……モンスター達と一緒にバリアが破られる時を共に待つことにするよ」
「……そうね、それが良いわ！」
これが自分にもTorielにとっても納得させられる回答なんだろう。
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作者名：アルフ | 作成日時：2020年1月19日 18時
