貴方の隣にふさわしい女になりたくて【米津玄師】

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『米ちゃん、わたし、おおきくなったら米ちゃんとけっこんする！』

『じゃあ、おれはだんなさんになる！』


随分と昔のことを思い出した。
私はA、22歳。今年で大学を卒業するいわゆる新卒というやつだ
就職先は出版社。既に内定ももらっていて、自宅でぶらぶらと過ごしている。

『今日はハチさんの曲を録音しよっかな』

私は１年ほど前からいわゆる、「歌い手」をやっている。

高校の時にボーカロイドが流行っていた。その時に”ハチ”さんにも出会った。曲調とか、もろもろすべてが好きで、Twitterもフォローしてたし、カラオケに行けばハチさんの曲は必ず歌うほどハチさんが好きだった。
でもさ、急にハチさんのTwitter名が幼馴染の名前に変わったのはびっくりじゃない？

米ちゃん、もとい米津玄師。
そう、あの米津玄師。この字の並びは幼馴染しかいない
中学まで学校が一緒で仲良く過ごし、高校は別々だったが、家はお隣さんで高校までずっと付き合いがあった米ちゃん

え、だって、え？

米ちゃんが、ハチさん？？？？
あの時は混乱ものだった。
米ちゃんのリア垢と相互の私としては大混乱

でも、それと同時に米ちゃんが私から離れていく気がして、あんなに仲良しでご近所からは米ちゃんと私でセットとして扱われていたのに、もう隣には一生立てない気がして怖くなった。

だから始めた歌い手としての活動。
あなたの隣に立っても恥をかかないようなふさわしい女になるため、
そして、米ちゃんに私を見つけてもらうために

米ちゃんと、ハチさんの曲しか歌わない歌い手。
名前は珊瑚。
動画の投稿頻度は少ないが、一定のファンを獲得した。正直、趣味程度に続けられたらな、という軽いノリで始めたからファンがつくとは思っていなかった。
これも、歌ってる曲が米津玄師のものだからかな？
米津パワー恐るべし……

『さーて、録音しますかー』

彼が奏でる音楽を歌ってるときは、私が彼を独り占めしているような錯覚に陥る
つまり、幸せな時間。
彼が紡いだ言葉が、リズムが私を包む。

『……ふぅ、』

一休みしたら編集しよう、そう思いキッチンがある階下へ向かった

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