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廊下には俊とAの足音と呼吸音だけが響く。
その音は会話も何もない二人の間に流れる静けさを強調する。
少しでも違う音が鳴れば崩れるであろう静寂の均衡。
それほどの緊張感。ヒリついた空気。
その均衡を崩したのは俊だった。
俊は歩調を段々と遅め、やがて駐車場へ繋がる細い廊下で足を止める。
それに合わせAも足を止める。
『兄様…?どうかしましたか?』
俊は少し周りを見渡し周囲に人がいないことを確認した後Aに視線を向ける。
その視線は何の感情も含まれていない、無機質な視線がAを鋭く刺す。
その視線にAはビクリと肩を揺らす。
俊「A。上手くやれと言っただろう。」
先程の声より数段低く、鋭く尖った声がAの恐怖を一段と煽る。
『上手く…やっているつもりなのですが…』
震えながらもAはなんとか声をだす。
俊「上手くやれている??ならなぜあの場に五条の坊が居なかった」
俊は馬鹿にしたように鼻で嗤う。
『どういう意味です?』
俊「どういう意味?そんなの決まっているだろう。なぜ父上が出来損ないのお前が高専に入学するのを許可したのか察せない程の馬鹿なのか?」
俊の鋭い言葉に含まれた冷たい圧に思わずAはうつむく。
だが、これでは何時までたっても変われないと思いAは顔を上げ俊の顔を見つめる。
その眼にはこの関係を変えようとする意志が確かに宿っていた。
『私はっ
俊「…なんだその目は」
俊は不愉快だとAの顎を強く掴む。
Aはその勢いにヒュッと息をのむ。
俊はAの瞳に再び恐怖の色が混ざりだしたのを見て、ほんの少し力を緩める。
俊「馬鹿なお前に教えてやるよ。お前はな五条の坊に気に入られて、五条家の嫁の地位を得るために入学したんだよ。お前が五条の人間になれば和泉家は呪術界で権力を握れる。五条の坊と同じ年に生まれたことを感謝するんだな、じゃなければお前は一生和泉家の下働きだよ」
強い言葉と幼いときから染み付いた恐怖で瞳に涙の膜がはる。
俊「泣くのか?今ここで泣くぐらいなら五条の前で泣け。お前は顔は悪くないのだから泣いて気をひいたらどうだ?」
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み付 - 今日初めて読みました とてもいい話です!質問ですが続編のパスワードがわかりません。できれば教えてください (8月25日 23時) (レス) id: 6c0bcf64f8 (このIDを非表示/違反報告)
催花雨(プロフ) - プスメラウィッチさん» 五条さんオチにしようと思ってます!ありがとうございます!これからも読んでくださると幸いです!これからも宜しくお願いします。 (2021年5月5日 21時) (レス) id: d4f28ace1d (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年5月4日 0時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
催花雨(プロフ) - あおいさん» コメントありがとうございます!ヒロインちゃん頑張ってちょっとずつ心を開かせていくので、その過程も楽しんでいただけたら嬉しいです! (2021年1月7日 21時) (レス) id: d4f28ace1d (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - ヒロインが五条くんとどのように関わっていくのか楽しみです!更新頑張って下さい☆応援しています! (2021年1月7日 21時) (レス) id: eedcdb2f62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:催花雨 | 作成日時:2021年1月4日 1時