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「 今回はとにかく数が多いです。いくら低級の集まりとは言え、油断しないでください。
それでは帳を下ろします。ご武運を 」
律儀な補助監督さんは少し頭を下げる。彼とはそれなりに長い付き合いではあるが、いまだに堅苦しい挨拶を忘れてはくれない。
私の補助をしてくれる事の多い彼だが、口数も少ない。ちょっと気まずいかも。苦笑が漏れた。
彼が帳を下ろす言葉を唱えれば 、 茜色の空は 、 深く暗い夜の闇に包まれた 。
周りを散策していれば 、 少し遠くから気配を感じる。
そこへと走りながら 、 ふと思い出す 。
『 お土産何にしよう 』
長期出張だからお土産必須だろう。何個あれば良いのかな 。一人一個?
そんな余計なことを考えていたからいけなかったのだろう 。
ふと前を見た時には 、 目の前に呪霊が迫っていて。うわお、と声を出しながら、身体は後ろに吹き飛んだ 。
耳につく甲高い声で叫びながら直進してくる呪霊に 、 もう少し頭を使えば良いのにと呆れてしまう 。こんなのに一撃入れられるだなんて、いくら考え事をしていたからといえ、あってはいけないことだ。
なぁんて、そんな真面目なことは考えないけれど。
呪力の塊をそれにあてれば 、 一瞬で消えた 。ざあこ。
今の音だか呪力だかで気づいたのか、ぞくぞくと呪霊はやってくる 。
『 めんどくさー』
そんなことを声に出してしまえば 、 余計に嫌になってしまう。
そして一番効率の良い方法を思いついて、呪霊と反対方向に走り出した。全く私ってば天才かもしれない。
どたどたと追いかけてくる呪霊たちに追いつかれそうになって 、 やっと足を止めて振り向く 。
思った通りにいきすぎて 、 思わずにやりと笑った 。
『 さよなら 』
ふぇぇ 、 という声と共に 、 帳が上がった 。
空の色は変わらず 、 深い夜の色のまま 。
もう日が暮れちゃったか 、 と補助監督の元へと戻った 。
出来る限りの気配を消し 、 彼の後ろに回る 。
わっ!と肩を叩けば 、 彼はびっくりしたようにスマホを落とした 。
いや大切でしょうよ、スマホ。落としちゃダメじゃん 。私が悪いけども。
「 …… おかえりなさい 」
ものすごく不機嫌そうに彼は言った 。
こんなに不機嫌なの初めて見たわ 、 なんて笑ってみせれば 、 彼ははじっと私を見た 。
『 ごめんって。親睦を深めたかっただけなんだよぉ、反省してるからその目やめて 』
「反省って言葉の意味を調べてみては?」
『 反省してます 』
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作者名:よる | 作成日時:2024年1月10日 16時