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 一月ぶりの好物に口内を占拠されていたせいで声が出せなかったAは、突然隣で恋人が可笑しな話を始めても「急にどうした」と目で訴えるしかなかった。


 Aの紹介から、と言われても自己紹介なら料理が届くまでに全員で済ませたし、自分は傑に『特別』だと言わしめるような人間ではない筈だ。
 十二分に『特別』な呪術師たちの目の前で、ましてや呪術師最強と謳われる人間の前で、Aが特別だなんて。身の程知らずにも程がある。

 これはさすがに駄目でしょ、と抗議のために口内のオムライスの咀嚼を急いでいれば、悠仁が驚いたように目を見開いた。

「あーっ、それでなの!?」
「な、何がよ」
「や、さっきからアイツが変われ変われってうるさくてさぁ」

 野薔薇の問いかけに答えながら、悠仁はこめかみを手首の内側でごつごつと叩く。
 その仕草はまるで本当に誰かが頭の中にいるようで、彼が呪術師じゃなければ、Aは精神科の早期受診を勧めるところだった。

「メシ食ってっから出てくんなって言ってんだけど…あっ」
「おぉ、やはり!」

 ぐぱり、と悠仁の頬にわき出た顔はAを見とめると、にぃ、と笑う。

 あれはなん──



 バチンッ。

 悠仁が自らの頬を平手打ちした音に意識を引き戻される。

「もー、出てくんなっつったろ!?」
「黙れ小僧」

 平手打ちしたまま頬に向かって文句を垂れる悠仁の、その手の甲に、またさっきの顔がわき出てきた。

 なるほど、あの顔はどこにでもわいて出るのか。

 ぎゃんぎゃんと小言が止まらない悠仁に適当な返事をする手の甲をそれぞれ交互に眺めながら、やっぱり呪術師って変わってるなぁ、などとぼんやり考えていると、

「ほぉ?」


 ぱちり、手の甲に浮き出た単眼と目が合った。


「…!」

 品定めでもするかのようにAをじっと見据える赤い瞳。
 その下でへの字に曲がっていた唇が、ゆるりと弧を描く。

「久し振りだな。…随分面白いことになっているようだが」



 ……はい?

漆→←伍



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はる(プロフ) - はぁぶ。さん» コメントありがとうございます!現在続きを執筆中ですので、もうしばらくお待ち頂ければ嬉しいです…! (2021年3月30日 5時) (レス) id: e7a5f4a337 (このIDを非表示/違反報告)
はぁぶ。 - あ、好きです。頑張ってください。応援してます! (2021年3月29日 19時) (レス) id: 8d998a1a1d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はる | 作成日時:2020年12月5日 1時

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