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人は良くも悪くも影響されるもの(夏油) ページ9

Aはそれからすぐに目覚めた。だが、その体は万全ではないのは明らかだった。
それでもAは上体を起こし、私と悟と硝子の頭を優しく撫でた。

「…………ありがとうな」

よく頑張ったな、と言葉を投げかけられ、もうAは大丈夫なんだ、と私はAを抱きしめた。
Aは弱くだったが、抱き返してくれた。

「すぐで、悪いが……少女のところに、案内してくれないか」
「…………A、無茶だよ」
「無茶じゃない」

そう言ったAは硝子の制止も聞かず、ベッドからすくっと立ち上がった。
その顔色は相変わらず良くはなかったが、それはいつものAに見えた。

今のAには何を言っても聞かないのだろう。
私は立ち上がって、悟と硝子も連れ、Aをその部屋まで案内した。

「理子ちゃん、大丈夫だよ。開けてくれないか」

私がそう言うと、がちゃ、と音を立ててゆっくりと開いた扉。
不安そうな顔をした理子ちゃんが顔を出した。

「……く、黒井は……」

開口一番のその問いかけに私達は口を噤んだ。
Aは扉を押し開け、部屋の中に入っていった。

「お前が、結晶体か」
「……星漿体だよ」

もはやボケなのか本気なのか、よくわからない。
Aは壁に寄りかかり煙管を取り出し、吸い始めた。
部屋に白い煙がもくもくと上がる。

「この国から逃げる覚悟は、出来てるだろうな」

Aは、白い息を吐き出しながら、そんなことを問いかけた。

「この国、から……」

その言葉に理子ちゃんも息を呑んだ。

「黒井は……?黒井と一緒じゃないといやじゃ……!!」

Aは私に目を向け、誰だ、ときいてくる。
私は、それを話さなければならない。

「理子ちゃん……落ち着いて聞いて欲しい。黒井さんは、助けられなかった」
「…………嘘じゃ。そんな、黒井が……」
「すまない…………」

ふー、とAが息を吐く音だけが、部屋に落ちていった。

「黒井が……黒井が死んだなら、生きる意味がっ、ない……!なんで……なんで黒井が……!!…………妾を殺せ……殺すがよい……!」

理子ちゃんは私の服を掴んで私を力無い拳で叩いた。
私の心はその少女の絶望した姿を見て、痛んだ。

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フルーツパンチ侍(プロフ) - きょきょさん» ありがとうございます(^ ^) これから最終章に向けて主人公サンの事が明らかになったり、ちょっとシリアスになっていきますが、主人公サンが必死で食い止めるみたいなので応援してあげて下さい┏○ (9月28日 21時) (レス) id: 7959978e00 (このIDを非表示/違反報告)
きょきょ - この作品すごく大好きです!更新楽しみにしてます! (9月27日 20時) (レス) @page14 id: c9d0d6f436 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月23日 11時

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