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だが、呪霊を野放しにすることで被害者は増える。
…………その被害者は、私が救わなければいけないものなのか?
……いや、それは強者である私達に課せられた使命。それ故に私達呪術師は、
グイッと引き寄せられた顔に、ふーっと白い煙が吹きかけられた。甘い。
「傑。私だけに集中しろ。どっかに飛んでくな」
いつの間にかAは私の椅子の横に立っていて、私の顎をつかみ上げていた。
強制的にAの黄色の瞳と目が合う。
その言葉とともに私の意識は黄色の目の奥に吸い込まれていった。
ヒューと、マスターや常連のおじさん達が私達を見て子供の冷やかしのような声が聞こえてくる。
本当にここの人たちは……。
「Aちゃんー、二人掛けのソファがあるけどそっち移動するかい?」
「あー、じゃあそうする」
私はAに腕を引かれて連れていかれる。
まだ頭がふわふわとしていた。
私だけに集中しろ、と言ったAの声が脳内で響く。
私はAに肩を押されすとんとソファに腰を落とした。その少し横にAが座る。
コーヒーの匂いに混ざった甘い煙管の香りが舞った。
そしてAは私のことを引っ張った。
私の体は引っ張られるがままに倒れ、頭がAの太ももに着地した。
あの時の悟のように、私は今膝枕をされている。
そのままブランケットまでかけられて、私は寝かしつけられようとしているのだと気がついた。
「傑さ、寝れねぇなら私のとこに来いよ。一緒に寝てやるから。子守唄付きで」
「…………子守唄は、いらないな」
どうせ変な歌を無駄にいい声で歌い始めるから。
眠れなくなりそうだ。
だが、それは何よりも甘い誘惑だった。
その誘いに惹かれそうになるも、私と一緒に寝るということに何の危機感も持っていなさそうなAに、少しの苛立ちを覚えた。
不思議だ。
いつも寝られないというのに、Aの膝枕で頭を撫でられていると、無性に瞼が重くなる。
それから私が眠りに落ちるまで、そうかからなかった。
私はその日初めて、任務をサボった。
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フルーツパンチ侍(プロフ) - きょきょさん» ありがとうございます(^ ^) これから最終章に向けて主人公サンの事が明らかになったり、ちょっとシリアスになっていきますが、主人公サンが必死で食い止めるみたいなので応援してあげて下さい┏○ (9月28日 21時) (レス) id: 7959978e00 (このIDを非表示/違反報告)
きょきょ - この作品すごく大好きです!更新楽しみにしてます! (9月27日 20時) (レス) @page14 id: c9d0d6f436 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月23日 11時