サボりも休息のうち(夏油) ページ47
今年の夏は去年の災害が祟り、初夏という繁忙期がさらに忙しくなった。
それはもう授業なんて受けている場合ではないほどに、呪霊がうじゃうじゃと湧いた。
高専に通うまでもなく、部屋から一歩出れば、任務の日々。
Aともついに顔を合わせることもなくなった。
祓う、取り込む、その繰り返し。
その合間にAの顔が浮かぶ。だが、そんなことをゆっくりと反芻する間も無く、次の任務へと派遣される。
祓う、取り込む。
去年の今頃は、まだ6人でつるんだりしていたと思い出す。
祓う、取り込む。
最後にAの顔を見たのはいつだったか。
祓う、取り込む。
Aの背中が暗闇に吸い込まれていく光景が頭に浮かんだ。
祓う、取り込む。
Aの笑顔が、見えなくなっていく。
「…………傑。お前、どうしたんだよ」
ずっと心のどこかで私の胸の中に響いていた、焦がれていたその声が聞こえ、私は顔を上げた。
そこには怪訝そうな顔をしたAが運転席の方から私に向いていた。
Aが担当だったのか。気がつかなかった。
「A…………」
「来い、早く」
Aがバンバンと助手席を叩いた。それを見て、私もふらっと後部座席を降りて、助手席に移動した。
Aの眉間のしわは取れない。
「最近一日に何件もこなしてんだって?」
Aがアクセルを踏み込んだ。
この荒い運転でさえ、今は懐かしく、心地よく思える。
「……今年は、去年の災害のせいで呪霊の発生数が多くてね」
「……ふーん」
Aは興味があまりないような返事をした。
「私は最近よく潔高と建人と雄の送迎をしてるんだが、あいつらも一日に2件は回ってんだよな。傑はもっとだろ」
Aは1年と2年の送迎を主にやっているらしかった。
私達が2年の時はほぼ七海と灰原達の送迎をしていたくせに。
そんな子供みたいなことは本人には言わないが。
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フルーツパンチ侍(プロフ) - きょきょさん» ありがとうございます(^ ^) これから最終章に向けて主人公サンの事が明らかになったり、ちょっとシリアスになっていきますが、主人公サンが必死で食い止めるみたいなので応援してあげて下さい┏○ (9月28日 21時) (レス) id: 7959978e00 (このIDを非表示/違反報告)
きょきょ - この作品すごく大好きです!更新楽しみにしてます! (9月27日 20時) (レス) @page14 id: c9d0d6f436 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月23日 11時