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その目はしっかりと俺の方を向いているのに、俺のことは全く映っていないその目は、好きではなかった。
「そうだな……松陽は、私にとって父親のような人だった。教え子全員に愛を注ぐ愛情深い人だった。怒らせたら、夜蛾さんより怖かったがな」
くつくつと喉を鳴らして笑うAは子供のように見える。
俺たちの知らないAが、まだAの記憶の中には生きているのだ。
だが、語られた松陽という人物は、全て過去形だった。
「その人は、もういないのか」
Aはその問いかけに笑うのを止め、俺から空の桜に目を移した。
「もう、いない。私は結局、なにもしてやれなかった。親孝行も、まだだったんだよ」
静かに、息を吐きながらAはいった。
上を見えげた目は少し潤んでいるように見えて、俺はその目に手を伸ばした。
だが、それが届く前にAは俺を振り返った。
その目には涙は滲んでいなかった。
「ていうか悟なんでこんなとこにいんだ。任務だったんじゃねぇのかコラ。補佐監督さんに迷惑かけんな」
「いつもかけてるお前が言うなよ」
Aに背中をぐいぐいとおされ、無理やり俺は車庫の方へと歩かされる。
本当に自分勝手なやつ。
俺はそれに抵抗して踵に力を入れた。
そうすると俺の体は止まった。
「おい!サボろうとすんな!!」
「お前がな」
ピクリとも動かなくなった俺にAはギャーギャーと騒いでいる。
俺にはもう一つ、問い詰めてやりたいことがあったのだ。
「……お前さ、あん時なんで俺にキスしたの」
あの時、というのはあの旅行の日の夜のことだった。
あの夜も桜が綺麗で、星も綺麗だった。
Aの俺を押す力が弱まった。
「悟がしてきたんだろ」
最初は俺がした。
だけどその後のあれは違う。
Aはそれを嫌がらなかった。
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フルーツパンチ侍(プロフ) - きょきょさん» ありがとうございます(^ ^) これから最終章に向けて主人公サンの事が明らかになったり、ちょっとシリアスになっていきますが、主人公サンが必死で食い止めるみたいなので応援してあげて下さい┏○ (9月28日 21時) (レス) id: 7959978e00 (このIDを非表示/違反報告)
きょきょ - この作品すごく大好きです!更新楽しみにしてます! (9月27日 20時) (レス) @page14 id: c9d0d6f436 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月23日 11時