愛には色んな愛がある(五条) ページ40
Aには桜がよく似合う。
任務のため、用意された車に向かう途中、偶然Aを見かけた。
Aは、高専に舞い散る桜を見上げては、ぼーっと想いに耽っているような表情をすることがよくあった。
ふわふわとした黒髪に桜の花びらがちらほらと絡みついている。
その薄ピンクの花びらは、もう一種のアクセサリーのようにも見える。
ぶわっと花びらが青い空に舞い上がり、視界がピンクで覆われた。
俺の視界を奪う間に、桜がAのことを連れていってしまいそうで、俺は気付けば桜をかき分け、声をかけていた。
「なに突っ立ってんだよ。花びらついてんぞ」
「……悟」
振り返ったAは、あの時のように俺の名前を間違わなかった。
頬は少し緩んでいる。
Aの手に紙が握られていることに、近づいてから気づいた。
その桜の花びらを一枚、Aの髪から掬い上げる。
Aもその掬い上げた花びらを見つめていた。
「桜、まぶされてんじゃねぇか。……いい感じに髪に絡まって、似合ってるけど」
「……悟の口から似合ってる、なんて言葉を聞く日が来るとはな。ローラ◯ドでも食ったか」
「ローラ◯ド食えるもんじゃないだろ」
Aは視線を手紙に、ふいとそらしてそう言った。
俺のことは全く見やがらねぇ。
「……なにしてんだよ」
「あぁ…………少し手紙を読んでいた」
軽く渡された手紙は、海外に行った天内からのものだった。
海外での生活のことや、新しい友達のこと、新しい家族のこと、そして、Aへの感謝の言葉が並べられていた。
俺たちにも少しぐらい感謝しろよあのクソガキ。
その文面から、向こうで楽しそうにしていることはよく伝わってきた。
「お前たちが繋いだ命だ」
「その割には俺たちへの感謝の言葉が見当たんねぇんだけど」
「ツンデレなんだろ。アスカちゃんと一緒だ」
「誰だよアスカちゃん」
「お前らー……エヴァ◯ゲリオンも知らねぇとか信じられねぇ。シンジだけに」
「誰だよシンジ。そのギャグ伝わんねぇんだよ。伝わったところでクソしょーもないな」
「お前のATフィールドごと初号機でぶん殴られろ」
Aがバシッと叩いた俺の背中は、ちゃんと少しじんと痛んだ。
桜を見上げて少し眩しそうにするAを見る。
今なら、少し、話してくれそうな気がした。
「……Aの、先生ってどんな人だったんだよ」
桜を見上げていたAの顔が俺の方に傾いた。
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フルーツパンチ侍(プロフ) - きょきょさん» ありがとうございます(^ ^) これから最終章に向けて主人公サンの事が明らかになったり、ちょっとシリアスになっていきますが、主人公サンが必死で食い止めるみたいなので応援してあげて下さい┏○ (9月28日 21時) (レス) id: 7959978e00 (このIDを非表示/違反報告)
きょきょ - この作品すごく大好きです!更新楽しみにしてます! (9月27日 20時) (レス) @page14 id: c9d0d6f436 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月23日 11時