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Aが何かで席を立った時は、いつもマスターが無邪気に話しかけてきた。

「君、Aちゃんの彼氏さん?」
「い、いえ……私は……、」
「好きなんだね、Aちゃんのこと」
「えっ」

にこにこと人の良さそうな笑顔の奥が全く読めない人だと思った。
なのに、こちらのことはお見通しのようだ。恐ろしい。

「Aちゃんがここに誰かを連れてくる日が来るとは思わなかったよ」
「……Aはいつからここに?」
「そうだね……一年ほど前からかなぁ」

そんなに前から通っていたのか。全く知らなかった。

「Aちゃんは、ここのこと気に入ってくれてね。私だけの秘密基地だー、って言ってくれてたから」

そのAだけの秘密基地に私も連れて来てくれたのか。

店内を見回した。
本棚にはびっしりと本が並べられてあり、いろいろな楽器なども飾られている。
Aが好きそうだ、と私は笑みをもらした。

「きっと、君は特別なんだね」

その言葉に私は顔を上げた。
マスターのにこにこしたしわくちゃの笑顔が見えた。

私は、特別。
その言葉に私の胸はとくんと鳴った。それは、本当にそうなのだろうか。
胸がざわついた。

「…………何話してたんだ、マスター」
「たわいのない話だよ。そんなことよりAちゃんのギターがまた聴きたいな。弾いてくれたら割引するよ」
「まじか!!どうせならタダにしてくれよー」
「それは出来ない相談だね」
「えー仕方ないなー。じゃあ次回の分はマスターの奢りってことで手を打ってやるよ」
「それ結局タダってことになってるのよAちゃん」

相変わらずAはどこでも無茶苦茶らしい。

そして聴いた、初めてのAのギター演奏。
ゆっくりしたテンポで優しい曲調がギターによって紡がれる。
これもきっと、私が、初めて。

これからも、おそらく私だけがAのギターの音を知っていることになるのだろう。
特別、という言葉が私の胸に居残った。

最近の子供はもので釣れない(五条)→←第三者から言われることは心に残る(夏油)



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フルーツパンチ侍(プロフ) - きょきょさん» ありがとうございます(^ ^) これから最終章に向けて主人公サンの事が明らかになったり、ちょっとシリアスになっていきますが、主人公サンが必死で食い止めるみたいなので応援してあげて下さい┏○ (9月28日 21時) (レス) id: 7959978e00 (このIDを非表示/違反報告)
きょきょ - この作品すごく大好きです!更新楽しみにしてます! (9月27日 20時) (レス) @page14 id: c9d0d6f436 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:フルーツパンチ侍 | 作成日時:2023年9月23日 11時

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