ページ ページ30
何度飲み込んでも、絶対に慣れることのない、この不快な味。
私の腹の奥にその気配がすっと溶け込んでいくのを感じた。
「…………詰まった？」
「詰まってない」
Aのおふざけは止まることを知らないらしい。
だが、それに救われているところがあるのも事実だ。
行こう、と私はAの手を引く。
「妙姐のダークマター食べた奴みたいに顔が青色になってぶっ倒れたらどうしようかと思ったわ」
「ぶっ倒れるって……それはないよ」
「呪霊も錠剤みたいに苦いのか？」
「……いや、苦い……と言うか…………」
「美味くはないんだな」
「……まぁね」
「じゃあ別に取り込まなくて良くね？」
その言葉に私はAを振り返る。不味いなら取り込むのをやめてしまえ。
そんなことを呪霊操術を扱う私に言う人なんて、それを許す人なんて、Aぐらいだろう。
「……呪霊を取り込んでの、私だから」
「呪霊取り込もうが取り込ままいが、傑は傑だろ」
Aの言葉はいつも真っ直ぐに私を突いてくる。
私だけじゃない。悟も硝子も、理子ちゃんも、Aの言葉に、胸を貫かれている。
「いつも薬飲んだ後はなんか甘いもん食いに行くんだよなー。口に残る嫌な苦味が気になってな」
Aは私が引いていた手を、逆に引き始めた。
Aの背中は思っていたよりも小さい。こんなに小さかったのか。
「ケーキ食いに行くぞ！それでお”ぇってなろうぜー」
「おぇってなる為にケーキ食べに行くって……」
Aに連れて行かれたカフェで、私達は甘いケーキを頼んだ。
そして案の定半分くらい食べたところで、2人ともおぇぇ、となった。
「傑…………後は頼んだ」
「Aが来るって言ったんだから責任持って食べるんだ。私も分も」
「おい！！！傑も来ていいって言ったじゃねぇか！！自分の分は自分で食え！！」
「そっくりそのままその言葉、Aに返すよ」
残ったケーキの押し付け合いは終戦した。
お互いに、残すという選択肢はない。
「わぁったよ！！いっせーのででいくぞ！！裏切りはなしだからな！！」
「それはAこそ」
「いくぞ！！いっせーのーで！！！」
私達は大きな口でケーキを頬張った。そして咀嚼し、飲み込んだ。
「っぅ”……」
「ぉえ……」
飲み込んだ瞬間に反射的に出たその声に、Aと目が合った。
次の瞬間には2人で笑っていた。
もし彼女が常連の多い居酒屋で働いていたらすぐにやめさせろ（五条）→←前ページ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 177人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
フルーツパンチ侍(プロフ) - きょきょさん» ありがとうございます(^ ^) これから最終章に向けて主人公サンの事が明らかになったり、ちょっとシリアスになっていきますが、主人公サンが必死で食い止めるみたいなので応援してあげて下さい┏○ (9月28日 21時) (
レス) id: 7959978e00 (このIDを非表示/違反報告)
きょきょ - この作品すごく大好きです！更新楽しみにしてます！ (9月27日 20時) (レス) @page14 id: c9d0d6f436 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：フルーツパンチ侍 | 作成日時：2023年9月23日 11時
