【呪術廻戦】夏油くんしか！【短編集】 (ページ4)

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「酷い顔してんね」

「やっぱりそうだよね」

朝、寮で隣の部屋の硝子ちゃんと並んで教室に向かう。

眠れなくて、起きるのがつらくて少し遅くなってしまった。いつもはもう少し早く部屋を出ているのに。でも硝子ちゃんと朝から話せるのは嬉しいし、急ぐ用事もないのでゆっくり歩いていくことにする。

硝子ちゃんに相談するかとても迷ったけれど、硝子ちゃんのことだから夏油くんと五条くんの2人に変なことを吹き込みかねないし、やっぱり言わないことにした。

五条くんにだけは知られたくない、というのが大きな理由である。

「なんかあった？」

勘のいい硝子ちゃんは寝不足の私の顔を覗き込みながらそう尋ねてくれたけれど、「なんにもない」と首を横に振って笑みを浮かべて見せた。ちゃんと繕えているか分からないけれど、何かと気が利く硝子ちゃんは詮索することもせず、「あそ」とだけ言ってこの話題は終わった。

教室に行けば、いつも早くから登校している彼は既に居ることだろう。

少し気まずい。気まずいっていうか、気恥ずかしい。

ざわざわと騒がしい心を携えて、歩みを進める。

教室について、深呼吸をするよりも早く硝子ちゃんが扉を開けて。

切れ長の彼の目がこちらを見る。

「おはよう、A、硝子」

「おー」

「お、おはよ」

挨拶したものの、ぎこちない声になってしまった。
やばいかな、まずいかな、と冷や汗をかきながら、席に鞄を置いて、あ、そうだ、と手にかけていた紙袋を見やる。

覚悟をひとつ決めて、私は夏油くんに歩み寄った。

「あの、夏油くん」

「ん？」

紙袋を差し出して、これ、と。

「昨日、ありがと、貸してくれて」

「あぁ、こんな丁寧にしなくていいのに」

受け取りながら、体調は大丈夫かい？と夏油くんが言うので、大丈夫、全然！と返した。

「あまり教室で居眠りなんてするものではないよ、風邪をひいてしまうからね」

「う、うん、気を付けます」

「なに、A昨日教室で寝てたの」

硝子ちゃんが携帯を片手に笑う。誤魔化すように笑って、私は席に戻る。

「A」

戻ろうとしたところで、夏油くんに名前を呼ばれて肩がぴく、と跳ねる。

「大丈夫？」

「な、にが？」

変な態度になるな！と自分に言い聞かせる。

「いや、なんだかいつもと違うかなって」

「そんなことないよ！いつもと！同じ！」

見据えてくる彼の目に合わせられなくて、視線を不自然に逃がしてしまう。