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「ははっ、残ってる呪力で自分ごと潰すとかこの嬢ちゃんイカれてんだろ。」
暗転し暗くなった視界が徐々に明るくなり、視界にかかった霧が晴れていく。
「俺に殺されるぐらいなら自分で死ぬってか。7000万の懸賞金かけられるのも納得だ。」
その声も笑い方も態度も全てが不快。
「判断が少しでも遅れてたら半分だけじゃなくて右手丸々吹っ飛んでたところだったぜ。」
全てとはいかなかったけど、利き手を半分潰せただけマシな方か。
仮想怨霊に気を取られてるうちに夏油をあいつの背後に飛ばす。
肩に乗ってる武器庫の呪霊さえ取り込めばこれ以上呪具によって不利になる事はない。
「!!お前、なんで!」
夏油と私で板挟み。
あとは物量で、夏油の呪霊と私の術式でゴリ押しすれば勝てる。
そう思ってた。
階級換算で2級以上の差があれば無条件で取り込めるはずの呪霊が取り込めなかった。
こればっかりは誰も予想出来なかった不測の事態。
『夏油!』
映画のワンシーンみたいに、全ての映像がスローモーションで再生される。
目の前には赤黒く染まった地面の上に眠ったように倒れ込む友人の姿。一気に血の気が引いていく。
涙で視界が滲むが下唇を噛み締めると口の中に鉄の味が広がった。
「安心しろ、死なねぇ程度に斬った。」
『信用できるか。』
「利き手潰されたせいで殺せるほど力込めて斬れなかったんだよ。てかなんで?確かに1回死んだよな?」
気を失った夏油の頭をガッと蹴りつける目の前の男にふつふつと殺意が湧いてくる。
この男は悟様を殺した。私から悟様を奪った。
理子ちゃんや黒井さんを殺した。夏油を、私の大事な仲間を傷付けた。
それだけの理由があれば、もういいでしょう。悟様。
負の感情に支配されて、怒りに身を任せたって。
考えるより先に身体が動いていた。
それからの記憶は曖昧でハッキリ思い出せない。
制御不能となった怒りをぶつけて、潰して、潰して、リセットして、潰す。その繰り返し。
相手の体力を削って削って、あともう少しと言うところで先にガタがきたのは本殿の方。
音を立て崩壊する瓦礫の下敷きになれば、夏油が死ぬ。理子ちゃんが潰れてしまう。
自分に使うはずだった最後の呪力で降り注ぐ瓦礫を弾いて私の意識は途切れた。
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雪【α】 - ハピエンとバットエンド希望です。この小説ドキドキして面白い! (2021年5月21日 2時) (レス) id: f978c7a4e5 (このIDを非表示/違反報告)
茶封筒 - 両方見たいです!!!!!このお話大好きなのでお願いします!!!! (2020年12月21日 17時) (レス) id: 9a32fa7e9b (このIDを非表示/違反報告)
アホの化身 - ハピエン希望めっちゃおる(°□°) (2020年12月21日 15時) (レス) id: 62410cc231 (このIDを非表示/違反報告)
Momo(プロフ) - いつも楽しく拝読させていただいてます...!ハピエン希望です!!!!! (2020年12月20日 22時) (レス) id: 651bcbd47b (このIDを非表示/違反報告)
ミシェル(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます!!ハッピーエンド希望です!!! (2020年12月19日 16時) (レス) id: d1d8a7d57d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しかく。 | 作成日時:2020年12月9日 2時