お嫁さん ページ10
黙ったまま、吟味するようにアルバムを眺めていく五条先輩。
やがてそれも終盤へ近づき、各々の『将来の夢』という定番ページになった。
「お、面白そーなのきた。宮井Aの将来の夢は〜?」
「この年はたぶん…パン屋さんですかね」
「この年はって何だよ。定期的に将来の夢リセットしてんの?そんなの人生リセマラしてるヤツがやることじゃねぇか」
「小学生はそういうものなんです…!」
「てかどのクラスにいたかは覚えてねぇのに、将来の夢は覚えてんだ。そうだ、順番に言ってけよ。小一ん時の夢は〜?」
ハイ、どうぞ。緩衝材として入っていたプチプチを丸め、マイクのようにして突き出してくる五条先輩。その様子に少しイラッとしながらも、私は俯きながら正直に言うことにした。
「……およめさん………」
「…は?」
目を丸くした五条先輩から、最初に返ってきたリアクションがそれだった。半笑いでもう一度「は?」と聞かれ、私はヤケになって大声で叫ぶ。
「だから…!お嫁さんになりたかったんです!」
「小一からすでに結婚願望あったのか。さすが宮井」
「バカにしてますよね?あ〜もう、言うんじゃなかったなぁ…」
珍しくショックを受け、私はごろんと床に転がった。別に、小さい頃の夢なんだし。笑わなくたっていいじゃん。昔兄にも笑われたことを思い出し、本当に男子ってデリカシーないんだから、と口を尖らせる。
「宮井、拗ねんなって。かわいいと思っただけだよ」
「今言われても嬉しくないです…いいです、これ小三までの夢だし…」
「諦め早いな。じゃあ、次の夢は?」
「市役所職員…」
「急に現実的」
床に転がったままの私に、五条先輩が続けて尋ねる。
「もう、お嫁さんにはなりたくねぇの?」
「なりたくないわけじゃないですけど…可能であればなりたいです…女の子だし」
「ふぅん」
興味がないふうを装った、適当な返事。
その真意に思いを巡らせるまでもなく、あっけらかんとした口調と声色で、五条先輩が告げた。
「じゃあ、俺が叶えてやんよ」
「……え?」
「お嫁さんになりてぇんだろ?」
卒業したら、もらってやるから。
サングラスを外して、かっこつけてキメ顔で言う五条先輩。その言葉のどこまでが本気なのか分からなくて、私は言葉に詰まってしまった。
呆然とする私を見て、五条先輩が困ったように笑う。
「…意味、分かんなかったか?卒業したら、結婚しようぜって意味な」
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つく(プロフ) - のみさん» のみ先生ありがとうございます…!のみ先生からの励まし、とても力になりました。今後ともよろしくお願いいたします…! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月*小夜セコム隊さん» オワァ!最初から読んでいただいてありがとうございます…!続編についてもいつか公開すると思いますので、また楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 晩鶴紫呉さん» ありがとうございます〜!続編についてもぽちぽち書き進めている最中ですので、いずれ公開します! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - はにゃさん» ありがとうございます!続編もいずれ公開されると思いますので、その際はよろしくお願いします〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 五音さん» コメントありがとうございます!続編については制作中ですので、ある程度アップできる状態になったら公開しようと思います〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つく | 作成日時:2021年1月16日 1時