初恋同士 ページ8
あれからちょうど一年。
あの時あの小さな町の電車に揺られてた少女は今、俺の隣でテレビを観ている。全国の田舎を行脚するバラエティー番組。それを眺めていると自分の地元を思い出したのか、宮井が喋り始めた。
「私の地元、電車が一時間に一本しかないんですよ。しかも二両編成」
「知ってる」
「そうなんですか?五条先輩、私の地元来たことありましたっけ」
「一年の時に任務で。ナントカ町っていうクソド田舎だったな」
「じゃあ私たち、もしかしたらどこかですれ違ってたかもしれませんね!」
何も知らずに、間抜けなことを言い出す宮井。
だよな。お前はあの時、本しか見てなかったもんな。
「先輩みたいな人いたら、絶対忘れないんですけど」
「どうだかな。お前バカだし、ちょっと歩いたら忘れんじゃねぇの?」
「いやいや、私、けっこう記憶力いいんですよ?」
「バカ」
「ええ…?」
この一年間、俺ばかり宮井のことを追いかけていたのかと思うと、少し悔しい。今こうして隣にいるわけだし、結果オーライといえば本当にそうだが。
「…お前さ、中学時代って、どんなヤツだったの」
でも…俺が見ることのできなかった宮井の過去を全部知りたいと思ってしまうのは、傲慢だろうか。
「え、中学時代ですか?」
「友達何人いたとか、何が好きだったかとか―――あと、好きなヤツいたか、…とか」
最後のは、いらなかったかも。
「いました」って言われたら、立ち直れないかもしれん。
どきどきしながら返答を待つと、宮井は少し考えるような素振りをしてから、苦笑しながら言った。
「好きな人は、いません。五条先輩が、私の初恋です」
照れくさそうに頬を掻きながら、そう告げた宮井。
「……マジ?」
「はい」
「本当に?」
「…はい。お付き合いするのも、先輩が初めてです…」
宮井の初恋は、俺。好きになったのも、付き合うのも、手を繋ぐのも全部、俺が初めて。
それがどうしようもなく嬉しくて、胸のあたりがぎゅうっと締め付けられる。照れ笑いする宮井が可愛くて、思わず手を伸ばして、自分の腕の中に閉じ込めた。
「やば…何かそれ、すげぇ嬉しいわ」
「そ…そう、ですか…」
「キスしたのも、俺が初めて?」
「そうですよ…先輩、何も言わずにキスしましたけど。私、初めてだったんですからね」
「そっか。それはよかった」
頬を膨らませて拗ねる宮井。そんな彼女に、俺は告げた。
「ちなみに俺も、お前が初めてなんだけど」
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つく(プロフ) - のみさん» のみ先生ありがとうございます…!のみ先生からの励まし、とても力になりました。今後ともよろしくお願いいたします…! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月*小夜セコム隊さん» オワァ!最初から読んでいただいてありがとうございます…!続編についてもいつか公開すると思いますので、また楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 晩鶴紫呉さん» ありがとうございます〜!続編についてもぽちぽち書き進めている最中ですので、いずれ公開します! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - はにゃさん» ありがとうございます!続編もいずれ公開されると思いますので、その際はよろしくお願いします〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 五音さん» コメントありがとうございます!続編については制作中ですので、ある程度アップできる状態になったら公開しようと思います〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つく | 作成日時:2021年1月16日 1時