小話 彼女のかくしごと�� ページ39
最近、宮井の様子が変だ。
何だかやたらとそわそわしているかと思えば、ちょっと目を離した隙に、じっと黙って考え事をしていたりする。話しかけるとびくりと肩を揺らして、大袈裟に驚いて…それが携帯を触っている時だったりすると、慌ててそれを後ろに隠す。
一瞬浮気を疑ったりもしたが、宮井は俺のことが世界で一番好きなはずだから、他の男になびくだなんて考えにくい。…とはいえ、最近忙しくてなかなか構ってやれなかったからな。そろそろ、甘やかしてやるか。
俺はちらりと視線を横に移し、テレビを観ながら紅茶を飲んでいる宮井に向かって「なぁ」と話しかける。宮井は「はい？」と返事をし、微笑みながら俺を見た。
「宮井さぁ、今週の日曜ヒマ？」
「今週の、日曜…」
「最近デート行けてなかっただろ。だから───」
久々にどこか行かないか。そう、さりげなく誘ってみる。
おそらく宮井は、尻尾を揺らして喜ぶだろう。
──────そう、予想していたのだが。
「……すみません…その日はちょっと、用事があって…」
てっきり『はい！』という返事が来るものとばかり思っていたから、…それが断りの返事だということを理解するまで、俺の脳はかなりの時間を費やした。
滅多に俺に逆らうことのない宮井。俺の誘いには必ず乗るし、どんな無茶ぶりをしても嫌だと言わない宮井。そんな彼女が、たった今、俺からのデートの約束を、断ろうとしている。
俺は「はぁ〜？」と駄々をこねるガキのような声をあげながら、眉間に皺を寄せて宮井に詰め寄った。
「何だよ、用事って。俺とのデートより優先しなきゃいけない用事って、何？」
「と、友達と…会う約束してて」
「お前、友達なんていないだろーが」
「しっ失礼な！いますよ！」
大袈裟に声を荒げて反論する宮井だが、その様子は実に怪しい。
コイツ、絶対に何か隠してやがる。
…まさか、マジで浮気とかしてねぇだろうな。疑いの眼差しを向けていると、宮井は申し訳なさそうに眉を下げて、ぽつりと呟いた。
「私だって、五条先輩と一緒にいたかったですけど…」
しゅんと肩を落とすその姿に、俺はぐっと唇を噛む。…俺がお前のその顔に弱いの、知ってるくせに…！「ごめんなさい」と上目遣いで謝られてしまえば、俺はもうなすすべなく許してしまう。
「…いいよ、また今度な。数少ないその友達、大事にしてやれ」
「あ…ありがとうございます。一言余計ですけど…」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 746人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つく(プロフ) - のみさん» のみ先生ありがとうございます…！のみ先生からの励まし、とても力になりました。今後ともよろしくお願いいたします…！ (2021年2月20日 13時) (
レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月*小夜セコム隊さん» ｵﾜｧ！最初から読んでいただいてありがとうございます…！続編についてもいつか公開すると思いますので、また楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 晩鶴紫呉さん» ありがとうございます〜！続編についてもぽちぽち書き進めている最中ですので、いずれ公開します！ (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - はにゃさん» ありがとうございます！続編もいずれ公開されると思いますので、その際はよろしくお願いします〜！ (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 五音さん» コメントありがとうございます！続編については制作中ですので、ある程度アップできる状態になったら公開しようと思います〜！ (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つく | 作成日時：2021年1月16日 1時
