昼空に咲く ページ25
「だめですって。見つかったら怒られますよ」という制止が五条先輩にとって何の効果もないことは、ここ数か月で嫌というほど身に染みている。
なので私は苦笑しながらも五条先輩の言葉に頷き、意気揚々と教室を出るその背中を追った。
コンビニでありったけの花火セットを買い漁り、掃除用のバケツに水を汲み、家入先輩の机の中からライターを持ち出し、私たちは屋上への階段を上る。屋上に続くドアには「立入禁止」の紙が貼られているけれど、五条先輩はそれには目もくれず、勢いよくドアを開け放った。
「快晴だな。いい花火日和」
「屋上なんて初めて来ました」
「まあ、普通の学校は立ち入り禁止だろうしな」
「五条先輩にも『立ち入り禁止』っていう概念あるんですね」
「ハァ？俺だって社会のルールくらい守るわ」
「さっきも思いっきり立入禁止って書いてありましたけど…」
誰もいない最上階。青空の下、広い屋上の真ん中を陣取る。五条先輩は早速袋の中から花火を取り出し、私に手渡した。
「…って！これ、打ち上げ花火じゃないですか！」
「セルフ花火大会なんだから当然だろ。花火大会の会場で手持ち花火してるヤツ見たことある？」
「音で先生たちにバレちゃいますよ…！」
「と思うじゃん？大丈夫だって、俺今日の運勢一位だから。ほら、やろうぜ」
ライターを構えながら、地面をトントン叩く五条先輩。どうやら、花火をセットするのは私の役目らしい。とりあえず適当に一つ選び地面に置くと、五条先輩がそれに火を点ける。やがて真上に打ち上げられたそれは、ドン！という大きな音とともに空に花を咲かせた。
「…あんま、見えねぇな」
「…お昼ですからね」
やっぱり花火は夜にやるものなんだな、と五条先輩。そう言いつつ、次の花火に火を点けている。
高専が住宅街に位置していなくてよかった。もし周りに民家があれば、今頃間違いなく職員室で苦情の電話が鳴り響いていることだろう。
「学校サボって花火するって、すげぇ青春じゃね？」
…やれやれと苦笑する私の隣で、五条先輩が笑った。
空は青く、雲一つない快晴。
からりとした夏の空気に、屋上に落ちる二人分の影。
そして背景には、この景色には場違いな花火の音。
昼空に咲く、八つで三千円の打ち上げ花火。
「…ふふっ。そうですね、先輩」
そのちぐはぐな光景が可笑しくて、思わず笑ってしまった。
五条先輩の見つけた「青春」が、また一つ増えた瞬間だった。
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つく(プロフ) - のみさん» のみ先生ありがとうございます…！のみ先生からの励まし、とても力になりました。今後ともよろしくお願いいたします…！ (2021年2月20日 13時) (
レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月*小夜セコム隊さん» ｵﾜｧ！最初から読んでいただいてありがとうございます…！続編についてもいつか公開すると思いますので、また楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 晩鶴紫呉さん» ありがとうございます〜！続編についてもぽちぽち書き進めている最中ですので、いずれ公開します！ (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - はにゃさん» ありがとうございます！続編もいずれ公開されると思いますので、その際はよろしくお願いします〜！ (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 五音さん» コメントありがとうございます！続編については制作中ですので、ある程度アップできる状態になったら公開しようと思います〜！ (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：つく | 作成日時：2021年1月16日 1時
