傷痕 ページ23
そこで初めて、五条先輩の前髪の隙間から、ちらちらと傷痕が覗いていることに気がついた。
思わず手を伸ばして、先輩の髪をかき上げる。先輩はそれに少し驚いたようだったけど、大人しく私のされるがままになっていた。
「あの後、俺も殺されかけた」
あまりにまじまじと見すぎたせいか、私が何か尋ねるよりも先に、五条先輩が自嘲気味に笑った。「ま、今は元気ピンピンだけどね」と付け足して笑う五条先輩だけど、私はちっとも笑えない。それでもかろうじて笑顔を作り、告げた。
「生きてて、よかったです」
「はは。それ、こっちの台詞なんだけど」
カーテンを開けると、部屋の中が一気に明るくなった。早朝の清々しい空気の中で深呼吸をすると、ぱあっと頭の中が晴れたような気分になる。
「何だか、生き返ったような気分です」
「その言い方シャレになんねぇけど。お前めちゃくちゃ寝てたから、今までの疲れも吹っ飛んだんじゃねぇの?」
「寝てたって、どれくらい…」
「三日」
「みっか!?」
まさか、三日も寝てたとは。五条先輩曰く、「硝子に診せたら貧血だろうって言ってたぜ」とのこと。…確かに、もともと貧血気味なところはあったから。怪我をして相当出血したようだし、そのせいで意識が戻らなかったのだろう。
…もしかして五条先輩、私が目を覚まさない間も、ずっとここにいたのだろうか。よく見たら五条先輩の携帯の充電器が床に転がっているし、他にも五条先輩の私物がちらほら増えているのが見える。
心配、かけちゃったな。そう申し訳なく思って「ごめんなさい」と謝ると、五条先輩は「別にいいけど」と言った。
それから今度は先輩が申し訳なさそうな顔をして、私の腹部に触れた。サングラスの下の瞳が悲しげに揺らめき、そのまま自分の触れているところをじっと見つめる。
「…それより、悪いな。痕、残っちまうかも」
「え…ふ、服の上からでも見えるんですか?さすが六眼…」
「ちげぇよ!んなキモいことするか!」
人がせっかく心配して…と、顔を赤くしながらぶつぶつ文句を言う五条先輩。
私は「ふふ」と笑って、先輩の頬に手を添えて言った。
「五条先輩が治してくれた証…みたいなものですから、むしろ嬉しいです」
そう言うと、五条先輩は目を丸くした。
それからサングラスを外して、ごつんと私の額に自分の額をぶつけて頭突きをする。
「変なやつ」
可笑しそうに言う先輩。
その声は、どこか嬉しそうだった。
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つく(プロフ) - のみさん» のみ先生ありがとうございます…!のみ先生からの励まし、とても力になりました。今後ともよろしくお願いいたします…! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月*小夜セコム隊さん» オワァ!最初から読んでいただいてありがとうございます…!続編についてもいつか公開すると思いますので、また楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 晩鶴紫呉さん» ありがとうございます〜!続編についてもぽちぽち書き進めている最中ですので、いずれ公開します! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - はにゃさん» ありがとうございます!続編もいずれ公開されると思いますので、その際はよろしくお願いします〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 五音さん» コメントありがとうございます!続編については制作中ですので、ある程度アップできる状態になったら公開しようと思います〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つく | 作成日時:2021年1月16日 1時