悪い予感 ページ16
夜。寮へ戻った私たちは、「おやすみ」の挨拶をしてお互いに自分の部屋へ戻った。
ぱたんと扉を閉め、明かりを点ける。今日東京へ戻ると言っていたはずの五条先輩だが、どうやら滞在時間を一日延ばしたらしい。その旨のメールが先ほど届いて、私は少し残念な気分になった。
はぁ、とため息をつきながらカバンを下ろすと、がしゃん!と派手な音を立てて机の上から何かが落ちた。おそるおそる床を見ると、落ちたのは小さな写真立て。五条先輩と一緒に撮った写真を入れておいたのだが、拾い上げると、ガラスにヒビが入ってしまっている。それがちょうど五条先輩の頭の位置にかぶっていて、「縁起悪いなぁ…」と思わず顔をしかめた。
そっと写真立てを元の位置に戻す。けれど、一度感じてしまった胸騒ぎはなかなか収まらなかった。
まさか、五条先輩たちに何かあったんじゃ。いやでも、私の勘ってあんまり当たらないからなぁ…。
電話をかけようと携帯を操作する指を動かしては思いとどまり、またそわそわと動かし…を数回繰り返す。そもそも五条先輩は任務中だし、電話なんかしたら迷惑だ。そう、思うけど。
どうしても、声が聞きたかった。
気がついた時にはもう通話ボタンを押してしまっていて、接続待ちの機械音が耳元で鳴り響いていた。一回、二回、三回。五回コールしても出なかったら諦めよう。そう考えた矢先、プッと相手から応答する気配がした。
『もしもし。宮井?どうした?』
五条先輩だ。
その声に自分でも驚くほどに安心して、私は先輩に聞こえないように重く長い息を吐いた。五条先輩、と声をかけると、五条先輩が電話の向こうで笑い声を漏らす。早く何か喋らなきゃ。私は息を吸いこんで、声が震えてしまわないよう気をつけながら言葉を紡いだ。
「あの…ごめんなさい、急に…今、忙しかったですか?」
『大丈夫だよ。どした?』
「……いえ…」
五条先輩は急かさずに、私の言葉を待っている。特に用があって電話したわけじゃない。ただ、先輩の声が聞きたかったから。そう言ったら、忙しいのにそんな理由で電話してくんじゃねぇ!と、怒られしまうだろうか。
…それでも私は、言わざるを得なかった。
「…さみしくて」
ごめんなさい。そう小さく告げると、五条先輩は瞬時に私の気持ちを理解してしまったらしく、「はは」という笑い声が聞こえた。
『俺も、ちょうど宮井の声が聞きたいと思ってた』
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つく(プロフ) - のみさん» のみ先生ありがとうございます…!のみ先生からの励まし、とても力になりました。今後ともよろしくお願いいたします…! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月*小夜セコム隊さん» オワァ!最初から読んでいただいてありがとうございます…!続編についてもいつか公開すると思いますので、また楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 晩鶴紫呉さん» ありがとうございます〜!続編についてもぽちぽち書き進めている最中ですので、いずれ公開します! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - はにゃさん» ありがとうございます!続編もいずれ公開されると思いますので、その際はよろしくお願いします〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 五音さん» コメントありがとうございます!続編については制作中ですので、ある程度アップできる状態になったら公開しようと思います〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つく | 作成日時:2021年1月16日 1時