浮気現場、激写 ページ13
「あ!家入先輩、見てください」
電車に揺られて三十分。ふらりと訪れたペットショップで、私は興奮気味に声をあげながら家入先輩に手招きをする。
「この猫、五条先輩にそっくり」
「ほんとだ。こっちは夏油」
「あはは。確かに、そっくり」
透明なショーケースの奥で戯れる、白猫と黒猫。その光景が喧嘩している時の五条先輩と夏油先輩に似ていて、可笑しくてつい笑ってしまう。それに家入先輩が上手にアフレコするものだから、私たちはしばらくの間、そこで笑ったまま動けなかった。
外に出ると、もう夕方だというのに蒸し暑い空気が頬を撫でた。まだまだ夏は終わらないらしい。冷たいものでも食べに行こうということになり、私たちは裏通りにあるカフェを目指すことにした。
てくてくと並んで歩くこと十数分。かすかに、「にゃあ」と鳴き声が聞こえたような気がした。
「ん?どーした、宮井」
「何か、聞こえませんでした?」
「死者の呼び声とか?」
「いえ、そんな物騒なものではなく…」
辺りを見回してみると、細い路地が目に入る。なんとなくそこへ近づいてみると、白い毛並みでふわりとしたシルエットの大きな猫が、「にゃあ」と泣きながら姿を現した。
「猫だ」
「この子も五条先輩そっくりですね」
「どうやら宮井は、とりあえず白ければ何でも五条に見えるらしいね」
猫に目線を合わせるために地面に膝をつく私に、家入先輩もやれやれと笑いながらしゃがみ込む。
おいでと言うと、猫はゆっくりと近寄ってきて、私の手にすり寄ってきた。そのまま撫でると、「にゃあ」と鳴きながら私の膝に乗り、ぐっと顔を近づけてくる。
「この図々しい態度、確かに五条そっくり」
隣で家入先輩が笑いながら、携帯のカメラをこちらに向けている。
「そろそろ、行きますか…」
「そだね。その猫何とかしないと」
「はい」
猫を膝から下ろすため、ごめんね、と言いながらその身体を持ち上げる。
すると不意にその小さな顔が近づいてきて、口にこつんと何かが触れた。
カシャ、というシャッター音が聞こえ、私が「え!?」と叫んだと同時に猫が走って逃げていく。その様子に家入先輩がけらけら笑いながら、先ほど撮影したであろう写真を掲げた。
「宮井の浮気現場、激写しちゃった」
そこに写っているのは…猫とキスしている私。
「モテる女は辛いね、宮井」
「何がですか!もう…」
「五条に送ってやろ」
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つく(プロフ) - のみさん» のみ先生ありがとうございます…!のみ先生からの励まし、とても力になりました。今後ともよろしくお願いいたします…! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月*小夜セコム隊さん» オワァ!最初から読んでいただいてありがとうございます…!続編についてもいつか公開すると思いますので、また楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 晩鶴紫呉さん» ありがとうございます〜!続編についてもぽちぽち書き進めている最中ですので、いずれ公開します! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - はにゃさん» ありがとうございます!続編もいずれ公開されると思いますので、その際はよろしくお願いします〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 五音さん» コメントありがとうございます!続編については制作中ですので、ある程度アップできる状態になったら公開しようと思います〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つく | 作成日時:2021年1月16日 1時