これからも、ふたり ページ49
「……寂しいです」
一人暮らしをすると聞いた時も、今週中に部屋を決めたいから内見に付き合えと言われた時も、引越しの手伝いをしろと言われた時も、…飲み込んでいた本音。
「先輩と、毎日会えなくなっちゃうのは寂しいです。もう簡単に会えない距離になっちゃうのは、寂しいです──────」
ぽつりぽつりと出ていく気持ちに、五条先輩は呆れたりしていないだろうか。
せっかく一人暮らしを始める、おめでたい日なのに。私がこんなふうに駄々をこねたら、先輩はきっと困ってしまう。
…でも、いいじゃん。
だって私、五条先輩の、彼女なんだから、…ちょっとくらい先輩の足枷になっても、いいじゃん。
すると隣から、「ふっ」という笑い声。「そう言うと思った」と笑いながら、五条先輩は私に「手、出して」と命令をした。
言われた通りに手を差し出すと、チャリ、という音と共に──────鍵を、渡された。
「これ…」
「ご褒美」
「そ、そうじゃなくて」
「合鍵。この部屋の」
「わ、私に預けていいんですか…?」
「逆に宮井以外の誰に渡すんだよ」
夕日をバックに、けらけらと笑う先輩。
「寂しくなったら、いつでも連絡しろよ。メールでも電話でも。そんで、会いたくなったらここに来い。俺がいなくても、ここで待ってろ。必ず、帰って来るから」
風になびく私の髪をさらりと指で弄びながら、先輩は言う。
愛おしそうに目を細めるその姿に、どうしようもなく胸がきゅう、と切なくなって。私は手の中の重みをぎゅっと握り締め、駆け寄るようにして五条先輩に抱きついた。
少しもよろけずに軽々と私を受け止めた五条先輩は、小さい子を抱っこするみたいに私を持ち上げて笑った。
「──────ま…しばらくは、離れ離れだけど。お前が卒業したら一緒に住むつもりだから、そのつもりで」
「──────はい…っ!」
END
746人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
つく(プロフ) - のみさん» のみ先生ありがとうございます…!のみ先生からの励まし、とても力になりました。今後ともよろしくお願いいたします…! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - へかーてぃあ@夢見月*小夜セコム隊さん» オワァ!最初から読んでいただいてありがとうございます…!続編についてもいつか公開すると思いますので、また楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 晩鶴紫呉さん» ありがとうございます〜!続編についてもぽちぽち書き進めている最中ですので、いずれ公開します! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - はにゃさん» ありがとうございます!続編もいずれ公開されると思いますので、その際はよろしくお願いします〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
つく(プロフ) - 五音さん» コメントありがとうございます!続編については制作中ですので、ある程度アップできる状態になったら公開しようと思います〜! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 90f06cbeae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:つく | 作成日時:2021年1月16日 1時