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9話 ページ11

「はぁ、はぁ、はっ、はぁ……
い、やぁ……!!!来ないで、」

「どいてろ愚図!!!」

怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

どけと言われても身体に力が入らない。
足ってどうやって動かすっけ。

誰に泣かされたの?と
優しさで聞いてくれたあの子は
とっくのとうにあの呪霊の爪にかかった。

対して出来もしないくせに、
私のことを見下して優越感にひたってたバカは、
逃げようとしたところを後ろから一突きだった。


「立って!!」

ぐい、と少し年上のお姉さんが、
私の脇に手を突っ込んで
半ば強引に体を起こさせる。

「走るのよ!!」

ぐい、と手を引かれれば、
あれだけ動かなかった足もようやく回り始める。

心臓が痛い。
何も分からないけど顔が濡れてる気がする。
今立ってるのはかろうじて分かる。
音が、よく聞こえない。

「どこに逃げるの!」

「分からない、あそこに蔵が!」

私の身体を引きずるお姉さんが、
ぴ、と指さして叫んだ。

あそこに行くの?
私の頭が、かろうじてその情報を処理する。

振り返れば、
私を愚図と庇ってくれた少年は、
細切れになっていた。

「っ」

できるはずだった子達が消えていく。

逃げてどうするの、
逃げ場なんてないのに。

私の頭をそんな、不信感が掠めていく。

「早く走って!!!」

ぐい、と体を引かれれば、
生来足の遅い私に思考をする余裕などなく。

バタン!!!

ひとかたまりになっていた全員が蔵に入り、
扉が閉まる。
真っ暗。
外で何が起きているのかも分からない。

「アソ、アソアソ、ボォォォォ……?」

ガタン!と音がした。

もう声なんてでない。
喉はとうに枯れ果てていて、
気を抜いて気絶してしまいたかった。

ダァン!!

私の真横を呪霊の爪が掠めて言った。
視界の端で、手を引いてくれた
お姉さんの頭が吹き飛ぶのが見えた。

「アソボォォオォ゛」

「いやぁ!!」

誰の声だったか。
逃げ場なんてなかった。

ただただ、蹂躙。
水溜まりのように溜まる赤赤赤。

「ふっ、ふっ……ふ」

じり、と臀で後ろに下がる。
もう誰も生きてはいなかった。

トン、と手のひらが何かを掠めて、
思わずそれに視線を向ける。

「あ……???」

瞬間、流れ込んでくる古代文字の羅列。
読めない。どこまでがひと単語化すらも不明。
そんな、記号の羅列。

でも自然といわんとすることはわかった。

これは術式だと、心のどこかでわかった。








気づいたら、血の池に浸っていた。

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ワイヤー女 - 新さん» ありがとうございます!!とても励みになります!これからも是非ともよろしくお願い致します! (2020年5月25日 16時) (レス) id: cedc192f36 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - めっちゃ好きです!!全てが好きです!!更新頑張れぇぇぇぇぇ!!!!! (2020年5月25日 13時) (レス) id: e596ede8e2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:よく骨を折る田中 | 作成日時:2020年5月23日 18時

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