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31話 長野辞めました ページ33

「……」

眼前には既に塵も残らないほどに祓った(殺した)呪霊。

突然耳元を突き刺した懐かしい声音と、
珍しく尚早を孕んだ催馬楽のタメ語。

呼吸が明らかにおかしい催馬楽が
黙って聞いていたのは、
昔の相棒が語る数年前の真実。

気づいたら全力で殴っていた。


僕のため?
あの日勝手に消えたのも?
何度裏切り者と言った?
何度彼女に理不尽を通り越してな暴力的な言葉を

思考が止まる。

随分と歪んだ相棒の、
嬉しそうな顔が目に見えるようだった。

思えば最近の催馬楽はおかしかった。
反応が鈍いし、
どこかぎこちない挙動。
この前家に行った時だって。

なにか隠してたのか。

その何かは、
傑が絡んでいるとなると呪霊絡み。

申し訳なさと焦りと怒りと、
頭がどうにかなるんじゃないかと思った。

今は神奈川。
今更駆けつけられる距離じゃない。
どこにいるかも分からないのに。
彼女は僕なんかに助けられたいと思ってるのか。
彼女の真意に、触れようとすらしなかったのに

「でも私はあの人を信じてる」

はっ、と意識が戻った気がした。

「できない自分がねぇ、
案外良かったなって思ったのは
できるようになってから。
できない世界は熱いけど死なない、
100度のぬるま湯。
できる世界は息を吸えば肺が焼かれる、
そんな世界だった。
辞めたかった。逃げたかった。
……でもねぇ、
あの人ずっとこんなふうに生きてきたんだな
って思ったのよ。」

あの人。

自分のことだとは自惚れじゃなく明らかだった。

「稽古場でねぇ、
自分なんかより遥かに高難度なことをねぇ
期待を一身に集めてやるの。
子供の体に重すぎる重圧だよね。
…………眩しいなって思ったよ」

それは。

「でもねぇ、あの人傍若無人でしょう。
信じられんくらい俺様で、
天才とか自分で言うし、
なんか何してもいいと思ってる節があるし。
この前だってチョコレート、
私に詫びに来たくせに
結局全部自分で食べちゃって。」

ひとつはお前が食っただろ。

「でもねぇ、全然へこたれないんだよ。
きついのに、しんどいのに、
しんどくないはずないのに。
……たまには休みたいだろうに。
眩しいの。こうなりたいと思った。」

それは。

確かに自分が彼女に抱いていた感情だ。

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ワイヤー女 - 新さん» ありがとうございます!!とても励みになります!これからも是非ともよろしくお願い致します! (2020年5月25日 16時) (レス) id: cedc192f36 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - めっちゃ好きです!!全てが好きです!!更新頑張れぇぇぇぇぇ!!!!! (2020年5月25日 13時) (レス) id: e596ede8e2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:よく骨を折る田中 | 作成日時:2020年5月23日 18時

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