罪状36 ページ37
『緑川さん。』
「さん付けはしなくていいよ。学生時代の腐れ縁なんだろ?北海。」
声を顰めて会話をする。
なるほど、呼び捨てで行くのか。
ならば私も敬語はいらないか。
『緑川、そういえばの話なんだが。』
「うん、どうしたの?」
『緑川の就職先って、無色か?』
ゴホゴホと咳き込む諸伏。
図星か。
無色、すなわち何の色もないこと。
何もない、ゼロ。
ゼロという名を持つ公安警察と言われる組織。
そんな組織に彼らはいるのだろう。
「…」
『図星か。随分と偉く秘密裏なところに行ったもんだな。』
誰かが私を出世したもんだと言ったが、こっちの方が立場は上だろう。
観念したように、諸伏が目を伏せる。
私の推理は当たっていた。
答え合わせができれば私はそれでいい。
「え、緑川さんって無職なんですか?でもさっき会社員って名刺くれましたよね…?」
「あ、いや、えーっと…、無色っていう会社の中のグループみたいなもので!」
『彼の会社は俗に言うクリエイター企業でして、そこのデザイン部の総称が無色なんです。』
「そうそう、紛らわしくってすみません…」
「いえいえ!こちらこそ失礼でした、すみません。」
自分が招いた種だ。
自分で芽は摘む。
諸伏は刑事が立ち去ると同時にため息をこぼした。
「ありがとう。」
『礼には及ばない。』
飲みかけのレモンサワーに、口をつける。
諸伏を見てみると、バッチリ目が合った。
『なんだ。』
聞くと、諸伏は慌てたようにして少し笑う。
「いや、なんか雰囲気違うなって思って。」
雰囲気?
私のどこが違うと言うのだろうか。
『どこがだ。』
レモンサワーを飲み切ってから、問う。
「それだよ、その口調。」
私の口調がなんだと言うのだ。
敬語がいらないと判断したのは自分だが。
「さっきまでは、ですます口調だったじゃない。素がそれなんだな、そっちの方が似合ってる。」
似合っているとは、なんだ。
心の中ではずっとこれだ。
わからない、と言うのが顔に出ていたらしい。
「人っていうのは口調で雰囲気が変わるもんなんだよ。」
そういうもの、なのか。
『そう、なのか。』
「うん、だって警察学校時代と印象が全然違う。」
今度は印象が違うらしい。
私は今も昔も私だが。
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つむやぎ(プロフ) - 明里香さん» 誤字脱字、ご指摘いただきありがとうございます…!修正させていただきますね。 (12月5日 16時) (レス) id: 0e2e7bdab8 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 24話、言われたことがるじゃなくて、言われたことがあるです。 (12月5日 10時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 17話、ミステリー付きじゃなくて、ミステリー好きです。 (12月5日 10時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 4話、私を読んだじゃなくて、私を呼んだです。 (12月5日 9時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 3話、犯行動悸じゃなくて、犯行動機です。 (12月5日 9時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:I luck | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/topaazu/
作成日時:2023年1月28日 8時