話 ページ11
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部屋の前に着き深呼吸をひとつしてから襖に手を伸ばすと部屋の中から
「Aか、入れ」
と言う声が聞こえた。
声を発する手間が省けたのはいいが、改めて中にいる人物の呪術師としての気配察知能力を身に染みて感じる。
20畳程の広い和室には掛け軸や骨董品などがいくつも飾られている。そんな部屋の上座で書き物をしている老人がこの家の当主蘆屋勧玄である。
Aが部屋へ入ると、勧玄は顔を上げ「ほう」と顎髭に手をやりAが正座をするのを眺める。
「見ないうち随分と女性らしくなったな」
『……』
「はっ、まあそう睨むな……高専では上手くやっているか」
『…ご要件は』
「久しぶりなんだ、本題に入る前に世間話くらいしても良いだろう」
『貴方とするような世間話は私にはありませんが』
「随分と口が達者になったな」
『……』
「まあいい…」
勧玄はそういうと正座から胡座に足を崩す。
「近頃、呪術師が何者かに襲われる事案が続いている」
だからなんだと言わんばかりに鋭い視線を送るA。
「一命を取り留めた術師たちが口を揃えてこう言っている。
"呪力のない白髪の人間"にやられた、とな」
それを聞いてピクリと動きをとめるA。
心当たりのある"呪力のない白髪の"というワードに眉をひそめている。
「思い当たったか」
『……』
「可能性の話だが、お前の兄」
『兄さんは………死にました』
震える声で言葉を被せたA。
『7年前呪霊に襲われて死んだ。遺体が見つかっていないとはいえ致死量の血痕が残されていて生きている可能性はほぼゼロだって、昔言ってましたよね。白髪の人間なんて大勢いるし、呪力がない、、人間だって……』
そこで言葉を詰まらせる。
非術師でさえも身体に呪力は宿っているのだ。完全に呪力のない人間は、そうそう生まれてくるものではない。
「可能性の話だと言ったろう。だがもし仮にその呪詛師が朔だったとすれば、蘆屋から呪詛師を出すことになる。それを周りに知られるのは避けねばならん…」
『……』
「五条に話は通してある」
その言葉を聞いて、五条がAに呪具を薦めてきた訳を確信する。
『………だったら何なんですか』
「お前が殺せ」
『ッ…』
覚悟していたかのように目を瞑るA。
数秒後、瞼を上げると立ち上がり部屋から出て行った。
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ひなみ(プロフ) - わー!ここで術式名が判明!かっこいい!しかも呪力操術って最強ですね?!考えていただきありがとうございました!😭 (2021年12月27日 17時) (レス) @page20 id: 81d9d42d97 (このIDを非表示/違反報告)
mikky(プロフ) - 更新ありがとうございます...!!すっごくすっごく嬉しいです!!またの更新楽しみに待ってます^ ^ (2021年12月26日 22時) (レス) @page20 id: 27e731af2f (このIDを非表示/違反報告)
ひなみ(プロフ) - 女優さんの方から来ました!めちゃくちゃ面白いですね!一つ質問なのですが、夢主ちゃんの術式に名前はありますか?あるとしたらどんな名前ですか?それだけが気になって夜も眠れません!笑 (2021年10月31日 10時) (レス) id: 81d9d42d97 (このIDを非表示/違反報告)
mikky(プロフ) - 更新ありがとうございます!ま、まさか9巻をやってくれるのですか!嬉しいです! (2021年4月28日 1時) (レス) id: 27e731af2f (このIDを非表示/違反報告)
あんパん(プロフ) - 渚さん» そうですそうです!! (2021年3月2日 19時) (レス) id: 543e9be939 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あんパん | 作成日時:2021年2月20日 22時