第3話 ページ4
「今日も暇なんですか？」
なんて少しの皮肉を混ぜて返してやればそれすらも気にしていないというように飄々と笑った後に「そんなこと言うと、マスターや梓さんに怒られますよ」なんてパチンとウィンクを決めるのだから安室さんはすごい。うーんかっこいい…、男の俺でもクラっと来そうな魅力が安室さんにはあった。これで29だろこの人、ひぇ、すご…………俺の語彙力が5歳児並み。そんなアホみたいなこと考えてるなんて悟らせないようにいつも冷ややかだと言われる少しつり気味の目をゆるりと歪ませ弧を描く。目元だけで笑ってやればこの顔に弱いのか安室さんはグッと黙り込むのだから面白い。
「ん"っん"っ、それより！最近は…変な事件とか巻き込まれてません？」
狼狽えたのを誤魔化すかのような下手くそな咳払いの後にそんなことを言うから可愛らしくてついつい笑ってしまう。これで俺より4つも上とか顔面の作りどうなってるんだろずるい。
「そう…ですね、そこまで大したことはないですよ。ただ、少しストーカー被害に遭いやすいですね最近。」
「ストーカーですか？」とおうむ返しのように聞き直す安室さんに少し苦笑をこぼした後にこくりと首を縦に降る。仕事柄、プライベートなことはバレたら命取りとなるようなものなのに最近の女性は強いのかいくら撒いても巻いても付いてくる。正直ホラーである。ポストに真っ赤な使用済みのナプ…んん、これ以上言うと俺のトラウマが発動しそうだからやめよう。少しかいつまんで話すとそれでも安室さんは大変だと言ってすぐに捜査に入ってくれると言っていた。さすが、現役の探偵さんは頼りになると少しホッとした気分でサービスですといつの間にやら置かれていた少し冷えたコーヒーをすする。
ブラックが飲めない俺のためにか人が少ないとあらかじめ砂糖やらなんやらを入れておいてくれる安室さんは優しい。これが噂のスパダリ…！と出会った頃はひどく衝撃を受けた。そのことを爆発物のプロフェッショナルなお二人に言うとなぜか爆笑してあれは顔が綺麗なゴリラだと告げられたのはいまだに謎である。ちなみに安室さんにそのことはチクった。大変素晴らしい笑顔をしていらしたので得意のボクシングか何か披露したのであろう。さすがゴリラ。
そんなことに思考を飛ばしていると楽観視しているように捉えた安室さんが眉間にムッとしわを寄せながら「聞いていますか？」と不機嫌そうに聞いて来た。
案外、彼は可愛らしい人である。
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作者名：小鳥遊 | 作成日時：2018年7月14日 9時
