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彼女と一緒になってネズミを眺めていた。目を瞑って、丸くなって動かない。
こんなのを見てて楽しいはずもなく、僕はすぐに疑問を切り出していた。


「君って、なんていうの」
「何が?」
「名前」

彼女がゆっくりと顔をあげる。
瞬きを一度すると、「無いけど」とだけ口にした。

どうして無いのか尋ねると、どうやら今まで必要がなかったらしいのだ。

ゼーレの資金を増やす為に、人体実験に使われていたという。
例えば、難病の特効薬を作るために、病原体を身体の中に入れられたりとか。

最近だと、エヴァのダミープラグの活用化に向けて色々やっているらしい。
包帯だらけの頭はきっとそれだ。

そんだけ惨い事をして生まれた金が何処へ行くのかと言うと、勿論ネルフだろう。
賠償金や修理額はまともに数えると、とんでもないことになる。

自身の命を削ってまでして生んだ金が、全く知らない人達の手に渡り感謝もされず消えてゆく。

可哀想だと思った。

こんな扱いを受けて、どうせ動けなくなったらすぐ処分されしまうんだろう。


「君は、このネズミと似ているね」

「そうかもね」


少女は少しだけ間を空けて、自嘲したように答えた。

けれども、そこに悲しみや怒りは見られない。

生まれた時からずっとそうだから、どうすれば良いのか分からないんだろう。



「僕が助けてあげようか?」


彼女は顔を上げた。
そこで初めて、彼女と目が合った気がした。

「どうやって?」

少女の問いかけに、僕は笑って手を伸ばす。

頬を撫でると、包帯のざらざらとした感触が伝わってきた。彼女に目立つ反応は見られない。

そのままゆっくりと輪郭をなぞって、首筋に触れる。
白い肌に痣や切り傷が沢山あるのが見えた。


「ここに流れる血管を、圧迫するのさ」


上手いことやれば、苦しくないよ。

笑って安心させるように呟くと、彼女は少しだけ微笑んで、『優しいね、君』と口にした。


「冗談さ」

僕は笑って応えた。

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未月 - 更新頑張ってください! (2021年3月16日 18時) (レス) id: 2a27e87c15 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:湯川 | 作成日時:2021年3月15日 19時

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