. ページ13
.
「おはようございます、」
俺は足を踏み出して、二人の前へと出た。
『おー京極やん、おはよう』
「めちゃくちゃ久しぶりですね」
『せやな、またメシでも行こうや』
「はい、また連れてってください」
辻さんはサラッと笑顔で答える。
俺から話しかけておいてなんだが、なんて切り替えの早さ。
先程までイチャついてたことなんてなかったかのようで。
それはそれでどうなん？と、心の中で悪態をつく。
きっと俺はこの先辻さんがどんな行動を取っても気に入らないんやろな。
メシにも絶対行かへんと思うし、きっとあっちも誘ってこんやろな、と思う。
引き攣る笑顔で社交辞令を済ませた後、
ちら、とAの方を見る。
緊張した面持ちのAは、ぎこちなく挨拶をしてきた。
後輩なのだから、私からせねばと、真面目なAは思ったことだろう。
『…おはよう、ございます』
「おはよう。…なんか、東京にいた時と、えらい雰囲気違うな」
『あ、はい、おかげさまで…』
「あれやな、綺麗やったけど、もっと、綺麗になったな。』
それは勿論、本心から出た言葉だった。
あの時見た笑顔は、未練のある俺が創り出した、
幻じゃないかとさえ思ったことがあった。
けど、久しぶりに、間近で顔を合わせた彼女は、
とんでもなく綺麗だった。
想像や記憶を、遥かに超えて。
言葉に詰まるA、一切目を離さない俺。
二人の間にはきっと、変な空気が流れていることだろう。
気まずさと、嬉しさと、嫉妬と、哀愁と。
AもAで、きっと俺に対して抱えている感情があるはず。
なんとも複雑な俺たちを見て、辻さんは何か察したようだった。
『あ、ごめん、俺先行かなあかんわ。Aの荷物持ってやってな』
ほい、とキャリーケースを押し付けて、辻さんは行ってしまった。
え、ちょっと、と急に置き去りにされて狼狽えるAを置いて。
(空気は、読めるんやな)
悪態をつきながらも、どこか感謝をしつつ。
その背中が小さくなるのを、二人で見ていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 340人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yucari(プロフ) - ただのファンさん» ありがとうございます！また今日から更新がんばります☺️🔥 (4月27日 9時) (
レス) @page14 id: 9764fa7a2b (このIDを非表示/違反報告)
ただのファン - 更新待ってますね💬 (4月24日 2時) (レス) id: 6498e20fe5 (このIDを非表示/違反報告)
yucari(プロフ) - つぁんさん» 感想めっちゃうれしいです！ありがとうございます！☺️🔥 (3月23日 22時) (レス) id: 9764fa7a2b (このIDを非表示/違反報告)
つぁん(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます🥰反撃編楽しみにしてます❤️🔥 (3月22日 12時) (レス) id: 8778fcf56d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yucari | 作成日時：2024年3月22日 5時
