Short short. (ページ5)

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あの頃、Aとは毎日のようにつるんでいた。

今はもう芸人を辞めてしまった、NSC時代同期だった、A。

価値観や雰囲気が俺とは真反対だったが、むしろそれが心地よかった。
性別の垣根を超えて、俺たちは大親友になった。
それは俺の一方的な勘違いではなく、共通認識だった。

でも、ある夏の日、決定的な出来事があった。

今日みたいに、ひどく蒸し暑い、夏の日だった。

「なあ、今日やばない？」
『ホンマやばいな。もう意識朦朧としてきた。』
「どっか涼めるところあれへんのかい」
『おん？あんなとこに映画館あるわ。風斗知っとった？』
「…なんやねんあのB級感ある映画館、」
『ふっ、ああいうところ、好きなんちゃう？』

お見通しと言わんばかりのドヤ顔で彼女は言った。

とりあえずこの暑い日差しから逃げられればどこでもよかったが、彼女の言う通り、このなんともいえない情緒のある映画館は俺のツボにハマる雰囲気があって、なんだかわくわくした。

元々今日はAの家で小道具を作るのを手伝う予定だったが、
家まで、いやそもそも駅までも少し距離があり、
俺たちは道半ば、死にかけていたのだった。

若手とも言えない、まだ卵すぎる俺たちにはタクシーを拾う余裕もなかったし。

しゃあなし、と言いながら、異様な存在感を放つ映画館へと近づいていく。
そして近くまで行くと、「本日カップルデー、半額。」の文字を見つけた。

『お！ラッキーやん、めっちゃ安く見れんで！』
「こういう時男女って便利やな。」

俺らは軽い気持ちで、冷房目当てに映画館へと入り、
聞いたことないタイトルの映画のチケットをカップル価格で買った。

中に入ると、客は男性ばかりで、Aは少し浮いていた。

少し経って映画が始まって、俺たちはその理由を知ることになった。