. ページ9
『じゃあ俺、とりあえず大通りまで出てタクシー捕まえて、
ヤスさんぶち込んで帰らせます！』
『おー、スマンな。頼むわ』
「…私もタクシー乗りたいんで、そっち着いて行きますね」
私らしからぬそんな提案に一瞬怪訝な顔をした京極さんだったが、
音を立てて着信を知らせるスマホに目を落とし、
『あー…じゃあ、みんな気をつけてな、おやすみ。』
電話に出て、話しながら去っていく。
(彼女さんかな。…遅くなったこと、怒られればいのに)
そんなことを思いながら後ろ姿を眺めていると、声がかかった。
『Aちゃん、俺たちも行こう』
「あ、はい！私もヤスさん支えましょうか？」
真っ直ぐ歩くこともままならないヤスさんを高比良さんが支えていて
私も反対側で支えようと近づくと、
『いいよ、重いし、』
「でも、」
『いや、重いしとか言って、
単純に俺が他の男の人に触って欲しくないだけ』
耳を赤くして、そう呟いた。
お酒のせいか、いつもよりストレートな表現に
私まで照れてしまう。
『なんでAちゃんも真っ赤なの、』
変なの〜と言って笑う高比良さんはご機嫌で
私の頬も緩んでいった。
そのあとタクシーにヤスさんだけを押し込んで、
家の住所を運転手さんに告げた。
『すいません、よろしくお願いします。ヤスさん、おやすみなさい！』
『あーい、ありがとな〜。Aちゃんもまた飲もうな〜』
「はい！おやすみなさい！お気をつけて！」
「本当に一人で大丈夫でしたかね？」
『うん。大人だし大丈夫だよ！寒いからさ、早くどこか入ろっか』
そう言うと、私の手は引かれて、彼のポケットに納まった。
その手を、今度は振りほどくことはなく
温もりに甘えて、繋いだままにした。
「高比良さん、」
『寒いからね！あと、何がいいかな、せめてくるまって呼んでみてよ』
「くるまさん…」
『はあい、くるまです』
なんだか初々しいやりとりに、くすぐったくなってしまって
二人で顔を見合わせて笑った。
(名前、呼び慣れないな。)
急にくるまさん呼びになって、明日、変に思われないかな。
私達の関係を京極さんは怪しんでいるだろう。
でもきっと彼のことだから、『俺には気にする権利もないからさ』なんて言って、飄々とするんだ。
なんて、くるまさんと手を繋ぎながら
頭では京極さんのことを考えていた。
そのあと少し歩いて、私達は偶然見つけた
半地下になっている大人な雰囲気のバーに入った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 190人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yucari(プロフ) - くまもんたさん» ありがとうございます！嬉しいです、励みになります！コメントありがとうございます！ (3月14日 23時) (
レス) id: 9764fa7a2b (このIDを非表示/違反報告)
yucari(プロフ) - ぼた餅さん» すみません何分不慣れなもので、よくわかっておらず、ご指摘助かりました！ありがとうございます！ (3月14日 23時) (レス) id: 9764fa7a2b (このIDを非表示/違反報告)
くまもんた(プロフ) - めちゃめちゃ好きなお話すぎます…！更新頑張って下さい！！ (3月14日 23時) (レス) id: 6a9f7cbdd2 (このIDを非表示/違反報告)
ぼた餅(プロフ) - オ.リ.ジ.ナ.ル.フ.ラ.グを外して下さい。違反になってしまいます。 (3月14日 10時) (レス) id: b56975c361 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yucari | 作成日時：2024年3月13日 22時
