瞳の奥をのぞかせて ページ1
×9th kzt
6時のアラームがけたたましく鳴り、
夢から現実へと私の意識は連れ戻される。
少し気だるい体と、隣に誰もいない感覚が余計目覚めるのを拒ませる。
いつだって、ふたりで夜に漕ぎ出しても、
夜明けの頃にはひとり置き去りにされる。
(今日もいない、か)
サラサラとしたシーツから出るのをやめて、
心の隙間を埋めるかのように枕をそっと抱き寄せる。
テーブルの上にある空のワイングラスが２つ、目に入る。
すっかり飲み干された、空っぽのグラス。
折角美味しいワインだったのに、思い出されるのはワインの味ではなくて
あなたの吸う、癖のある煙草の味。
最初は苦手だったな、煙草の煙も、匂いも、
冷たい目をしたあなたのことも。
全部全部、私が悪いのだ。
こんなに心を開け渡してしまうなんて、
どうかしている。
あの人は私を愛してはくれないし
満たしてもくれない。
それどころか本音のひとつさえ、教えてはくれないのに。
(やだな、泣けてきた)
このままシーツの中にいたら、
きっとまた昨日のことを思い出す。
そしてまた苦しい思いをする。
そんなループから抜け出すために、
シャワーを浴びてホテルを出ることにした。
早く私の日常に戻ろう。
テーブルの上のグラスの横に、ノートの切れ端を見つけた。
『ごめんな、今日仕事早いから先に出るわ。
Aはゆっくりしとって。
また連絡する、』
言葉を大事にするあなたらしい、綺麗な文字。
ごめんなんて思ってないくせに。
私のことなんて、どうでもいいくせに、
『また』なんて言葉で私を繋ぎ止めないでよ。
こんなにもあなたのことを想ってるのに、
時々どうしようもないほど憎くなる。
置いてあった手紙をくしゃ、と潰してゴミ箱に捨てる。
大事に家に持って帰ったりはしない。
また読んだときに惨めな思いをしたくないから。
それから全てを洗い流したくてシャワーを浴びるが、
体にはたくさんの淡い赤色、消えない跡が残されていた。
(もう、かんべんしてよ、)
愛すことも許されないが、
忘れることも許されないのか、と
絶望する。
私を閉じ込めて、この関係はどこで決着がつくんだろう。
跡が熱くなるのを感じた。
それでも認めざるを得ない。
私が、どうしようもないほどに、
彼を愛してしまっていることを。
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yucari(プロフ) - くまもんたさん» ありがとうございます！嬉しいです、励みになります！コメントありがとうございます！ (3月14日 23時) (
レス) id: 9764fa7a2b (このIDを非表示/違反報告)
yucari(プロフ) - ぼた餅さん» すみません何分不慣れなもので、よくわかっておらず、ご指摘助かりました！ありがとうございます！ (3月14日 23時) (レス) id: 9764fa7a2b (このIDを非表示/違反報告)
くまもんた(プロフ) - めちゃめちゃ好きなお話すぎます…！更新頑張って下さい！！ (3月14日 23時) (レス) id: 6a9f7cbdd2 (このIDを非表示/違反報告)
ぼた餅(プロフ) - オ.リ.ジ.ナ.ル.フ.ラ.グを外して下さい。違反になってしまいます。 (3月14日 10時) (レス) id: b56975c361 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yucari | 作成日時：2024年3月13日 22時
