私だけのカレ (ページ9)

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あれから
社内で何度もめがねをかけたカレを見かけた

相変わらず
先輩や同僚に囲まれて楽しそうにしていて

時に
社内でも目立つような女性社員とも
一緒に居る姿を目にしていた

だけど

私とカレが
お喋りしたり笑ったり一緒に居ることは

一切なくて

あれきり

まともに目を合わせることすらなかった

もう暑い日が迫ってきているのがわかる
そんな季節になろうとしていたある日

給湯室で
次の会議の為にお茶出しの準備をしていると

総務の先輩の男性から

『終わったら、行ける？』

そう言われて渡されたのは

先週の打ち合わせで議題になった

新しいシステム導入に伴って必要になる

人数分の申請用の資料だった

少しだけ、気が重たくなる

何にもないのに

気にするコトなんかじゃないけど

あの日以来なんだか気まずくて

気がつくと避けてしまっているから・・・

『お待たせ！』

説明にむかう途中で合流した
先輩の相変わらずのその爽やかすぎる登場も
元気いっぱいの声も
今の私には少しだけ霞んでしまう
それくらいに憂鬱で・・・・・・

少しでも顔を合わせるかと思うと
歩く速度が自然と遅くなる

アレコレと先輩が話かけてくれるけど
全く耳に入ってこない

『じゃあ Aちゃん、よろしくね！』

背中をポンっと推されると

既に前には打ち合わせブースで
マーケティング課の数名が座って待機していた

そう、めがねをかけたカレも・・・

先輩が最初からスムーズに進行してくれた

私が本来説明に入るべき箇所もどんどんと
説明を続けてくれるから
結局のところ
此処です、今はそこです等と言うだけで済んだ

だから本当に助かった

正直言うと
久しぶりに近くでカレを見て
顔をあげるコトすら出来ないでいたから・・・

《本当に今日はありがとうございました》

説明が終わって御礼を先輩に言って
打ち合わせブースを片付けていると

『御礼なんていいよ！』

『そんなのより、1回だけで良いから・・・
今度こそ一緒に飲みに行ってよ～』

何時かも言われたコトのある言葉を

また投げ掛けられていた