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翌日の定時を30分程過ぎたころ
そろそろと
帰り支度をしていると
「Aヌナ、遅くなってごめんなさい」
「出来ました！」
お昼休憩前にお願いした訂正が必要な書類を
子供みたいにヒラヒラと揺らしながら持って
とっても嬉しそうに笑って
私のデスクの横に立っていた
《ありがとう。わざわざごめんね。》
書類に目を通して、顔をあげて私がそう言うと
「ふふふっ、完璧でしょ！？」
なんて言いながら
目を三日月型に細めて満足そうにしているから
そんなコトを言うカレが余りにも可愛くて
《めがねくん・・・》
思わずまたそう口から出てしまっていた
ハッとなっている私を他所に
「めがねくんは僕のコト！」
「Aヌナと・・・めがねくん・・・
Aヌナ、めがねくん。ふふっ。へへっ。」
頭を揺らしながら
ブツブツ、ムニャムニャと独り言のようなことを言っているカレ
チラッと気付かれないようにそんな姿を見て
なぜだろう
何にもまだ
いや、むしろ、何一つとして知らないのに
私の心を簡単に揺さぶってきて
驚くほどスッと私の心に入ってくるから
何の抵抗もなく、違和感なく、
気がつくと、あっと言う間に
あなたが私を占めはじめていたの
「Aヌナ、もう帰りでしょう！？」
少し伺うように戸惑いながら聞いてきてくれる
《うん》
返事をした瞬間に
「駅まで、、、そこまで一緒に帰りましょ」
そんな言葉を返してくれていた。
【送ります】や【一緒に帰っても良いですか】
そんなのじゃなくて
【一緒に帰りましょ】
その言葉がまるで学生同志の会話みたいで
妙に新鮮で
何よりもカレらしくて
素直に嬉しかったの
エントランスに迎うエレベーターを
二人で並んで待っていると
『セフナ、お疲れ〜』
パク・チャンヨルの声が離れたところからした
彼は、私だとは気付かずに
色々とカレに話始めていて
とても饒舌に合コンとか、紹介したいとか
ずっと聞き役のカレに伝えていて
無意識に
そんな言葉に敏感に反応してしまう私
エレベーターが目の前で止まって
流されて押されて箱の中で落ちついた頃には
すっかり横に立っているコトはなくて
ずっとずっと遠いところから
ただ見ているコトしか出来なくなっていた
受付の前を通り抜けてエントランスに着き
一度だけカレと目が合ったけど
結局、何にも声なんてかけられずに帰宅した
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作者名：くじら | 作成日時：2017年5月15日 18時
