私だけのカレ (ページ36)

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知らなかった何もかも

本当に、全然、思いもよらなくて

私の知っている彼はとっくに居ない

もうずっとずっと遠くにいる彼は

若くして副社長の座についた
経営者一族の次男
オ・セフン

素人目にも

オーダーメイドだとわかる

グレーのピンストライプの3ピースを

完璧に着こなしていた

ただ記憶にあるのはそれだけで

他は何にも覚えてなんていないの

あの日からどれくらい経ったんだろう

もう
彼とは
いや
副社長とは
今や出勤する場所すら違って
私は
かつて当たり前のように通っていた社屋の隣
にひっそり建っている小さな小さなそこにある
自分の居場所へとただ毎日向かっているだけなの

私は

今の私はほとんどその存在すら知られていない

施設課の一人として

まるで

自分の存在を隠すように

ひっそりと息をするかのように

１日１日をただ過ごしていた

とても最初は受け入れられなかった

何かの間違いではと何度も思った

自分のことを一瞬で否定されたかのように思えて

そう、事実上の左遷だとしか考えられなくて

戸惑うばかりで

ただ

勝手に

どうして私なのと

辛いとしか

悲しいとしか

考えられなかった

ただ

仕事は私のことなんてお構いなしであって

人事課にいた頃とは

人の流れも時の流れも全然違う

私も

時に作業着に着替えて

何でもするようになった

だってここには私達を含めてたった7人しかいないのだから

それが良かったんだと

今の私ならわかるの

新しい環境に慣れることで

新しい仕事を覚えることで

全く彼のことを考えなくて良かったから

全く会わないこの状況も

もう忘れてしまえるとさえ思っていた

あの時あなたを見かけるまでは