私だけのカレ (ページ4)

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課長が

『えーっと・・・』

『あれ！？ないなぁ～』

山積みになっている自分のデスクで
いつものようにバサバサと音をたてて
頭を掻きながら何かを探している

『おかしいなー』

これは、【誰か助けてくれ！】のサイン

誰か＝一人しかいない

つまりそうこの私

私のいる人事課は
総務課・秘書課と並んで
うちの会社では移動の少ない部署で
私も入社以来課長をはじめ男性上司6人に
女性の先輩2人と派遣社員のオンニ3人は
変わることがないのだ
後輩の男性社員は2人増えた

だけど、
私が女性の中ではずっと一番下なワケで・・・

Aちゃん、よろしく！！

皆の中ではもう暗黙の了解になっている

もう誰にも何にも言われなくても、
私はこの合図を聞くと課長のデスクに向かう

【何お探しですか？】
夢中で探している課長に後ろから声をかけると

『Aちゃん、昨日最後に話してた・・・』
途中まで言うとまた手当たり次第紙を触る

【あれは確か総務が最終的に取りまとめです】
【結局こっちでは・・・】
私がまだ半分も言い終わらないうちに

『そうだったね！そっか、そっか』
『Aちゃん、ありがとう』
『思い出した、思い出した！！』

相変わらずの大きな声で、豪快に笑う課長

至極、府に落ちたのか
一人でめちゃくちゃに納得している

私も【良かった】なんて思いながらデスクに
戻ろうとしていると、

『Aちゃん、次から一緒にお願い！』

課長が指差す方は、
あの四人が座っている打ち合わせブース

【えっ！課長！！】

あまりに急な要求に
普段出さないような上ずった声をあげるから
皆の視線が私に一気に集まる

そう、めがねをかけたカレからも

めがねの奥は
確かに瞳を伏せて長い睫毛を印象付けてる
だけど、確かに
クスクス、ふふ、ふふって笑いを堪えている

【ほんと、恥ずかしい！】

【今日は、課長一人がやるんじゃなかったの】

頭の中は、ぐっちゃぐちゃ

なのに

早速、四人の前で課長が説明を再開していて

私はその横に立って必要な書類を配ったり

新しい社内用パスや筆記用具・朱肉などを

彼らに渡す

課長からの説明が終わると
気持ち良い位に次々と書類に字が埋まっていく

だいたい最後の捺印を残すあたりで

「すいません」

「ここわからなくて・・・」

「教えてもらえないでしょうか？」

と、カレに質問されていた