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《ただ忘年会の話をしてたんだよ》
《めがねくんお疲れさま》
《課長はあの忘年会好きだから・・・》
そう冷静に笑って話をしながらも
やっと会えたことが
この束の間の時間でも
嬉しくて嬉しくて
めがねくんの顔を見ると
何にもないのに何かに安堵するような気持の方が
何十倍も上回ってしまっていて
《会いたかったの》
なんて
気が付けば
この口から臆することなく紡ぎ出していて
「Aヌナ」
めがねくんの声でハッとなって
恥ずかしくて目も見れずに俯いていた
「こっち」
有無を言わさずヌナの手を握って連れ出したのは
誰もほぼ通ることのない屋外にも繋がる非常階段
1フロア分をそのまま駆け上がると外に出た
「エレベーター・・・」
「エレベーター・・・・・僕も乗ろうとしたのに」
《え！？》
ヌナの驚いた声は聞こえてくるけど
「あんな楽しそうにしてるから・・・課長と」
「どれだけ階段急いで降りたと思ってんの？」
まったく・・・わかってないと
余りにも子供じみた自分に嫌気がさすけど
ヌナの前ではどうにもならなくて
どんどん口から出てくる言葉はそんなことばかりで
【会いたかった】
ヌナのその言葉にどうして素直に自分も
そうだと言えないんだろう
ヌナのその言葉にどうしてまっすぐに自分から
ぶつかっていけないんだろう
「忘年会の後2人で話がしたい」
それが今言える僕の精一杯
やっと
いや 初めて
2人になりたいと伝えた
それなのに
《忘年会は・・・出席しないの》
ヌナから返ってきたそれは
想像することすらしていないもので
ただ茫然と立ち尽くすしかなかった
あの後どうやってデスクに戻ったんだろう
仕事も全く手につかなくて
茫然自失なんていうのはこのことなんだろうな
それからは何の気力もまるで出てこなかった
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作者名：くじら | 作成日時：2017年5月15日 18時
