21 ページ21
静寂に包まれた長い廊下
無機質で生活感がないような
広くて大きな幾つかのお部屋
こんな歳の人が住むようなところには思えない
まだだって24歳だよ・・・
どうなってるの・・・
どうしてこんなところ・・・
どうしたの・・・
いつから住んでるの・・・
全然頭が回らなくて、全然わからないの
本当にめがねくんのお家なの？？
手に持っていた買い物袋を落としそうになって
ここには看病しに来たことを思い出して
ここから一番遠くにある部屋
唯一閉まっているドアをそっと開けると
ベッドで横たわる
カレが目に飛び込んできた
汗びっしょりで苦しそうにしていて
息苦しそうに時より唸ったりして
火照るように赤くなった体から
高熱が出ているのがわかる
《もう 大丈夫だよ》
そう何度か言いながら
何の躊躇いもなく
着替えをさせて体を拭いて冷やした
めがねをかけていないカレを初めて見た
端正な顔立ちに
真っ白な透き通るような肌
それはまるで造形物みたいで
この世のモノとは思えないくらいに・・・
美しかった
それなのに
それ以上に儚くて、危ういと思えてきて
そのまま
そっとその頬に手を伸ばすと
まるで生きているそう言わんばかりに
その柔らかさと熱さを感じて
ハッとなって
その場から離れていた
このだだっ広いリビングの
似つかわしくないアナログ式の掛け時計が
21時だとおもむろに報せる音が鳴り響く
【そろそろ・・・・・】
【少しでも食べてもらってお薬飲んでもらわなくちゃ】
消化に良いものと思って
すりおろしたりんごとお粥をトレーに載せて
再びノックをして寝室に入っていくと
目を覚まして少し朦朧としながらも
体を起こしてペットボトルを口にしている
めがねくんが居て
《具合どうかな？》
「Aヌナ・・・・・！？」
きっと随分混乱しているんだと思う
私のようなありもしない人物が
めがねくんの寝室にいるんだから・・・
《驚かせてごめんね・・・・・》
《だけど、少し食べて欲しい》
《お薬も飲んでくれると嬉しいな》
《そしたらすぐに帰るから・・・》
クイーンサイズはあろうかと言う
ベッドサイドに近づいて
まだ熱っぽいそのおでこに触れると
「帰らないで」
「お願いだから」
悲しいカレの声が響き渡っていた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 229人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：くじら | 作成日時：2017年5月15日 18時
