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6月から選考を開始した
次年度の新卒採用が続き
それと並行して
中途採用の選考も始まって
秋にかけて
目まぐるしい日々を送っていた
【ノー残業デーか】
今日は久しぶりに定時であがろう
そう思って食堂から出ようとしていると
キム・ミンソクに会った
『《おつかれさま》』
ミンソクの右手には大好きなコーヒー
私の右手には大好きなラテ
どちらも社屋の前に出店している
小さなコーヒースタンドのもの
入社当時からのお気に入りを
相も変わらず飲んでいる自分たちに
思わず2人して笑っていた
少し立ち話をした後に
『A』
『頼みがあるんだけど』
珍しくそんなことを言うから
《どうしたの？》
覗き込むように聞くと
メモのような小さな紙を指し出して
『行ってやって』
そう言われて開いてみると
マンション名と簡単な地図が書かれていた
『セフナ・・・月曜から休んでる』
『高熱出してるみたいでさ』
『俺らじゃ・・・看病も・・・』
ここのところ仕事に追われていて
顔すら見れてなかった
部署も違うからそう頻繁ではないとしても
必ず1日に1回くらいは見かけていた
最後に話したのは・・・随分と前
《私！？》
《高熱って・・・》
《よっぽどだよね・・・月曜からなんて》
『お前にお願いしてんの』
『今度、奢ってやるから』
私なんかが行って大丈夫なのかな
なんて考えてるうちに
ミンソクはコーヒーを嗜みながら
エレベーターに消えて行っていた
またあの日みたいに
定時を報せるチャイムと同時に
デスクから飛び出していた
一人暮らし
そう聞いていたから
てっきり
ワンルーム位かと思っていたのに
メモ通りに辿り着いたのは
見上げるほどの高層マンションで
自分の目を疑ってしまう
恐る恐るマンションのエントランスを潜ると
コンシェルジュのような方が居て
会社名と名前を言ってカレの部屋番号を言うと
『お話は伺っております』
『どうぞお入り下さい』
最後まで丁寧に対応してくれていた
《めがねくん》
《Aです》
『・・・・・・』
返事がないのも当然で
少しドギマギしながら
玄関に一歩お邪魔すると
想像を遥かに越えるような
とんでもない大きさの
お部屋が目の前に広がっていた
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作者名：くじら | 作成日時：2017年5月15日 18時
