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さっきまでの笑顔から
めがねくんは急に
そのキレイな瞳を寂しさの色に変えて
どこか遠くの方をぼんやりと見つめて
ぽつりぽつりと
今にも消え行きそうな小さな声で
そう言っていた
《めがねくん・・・・・》
何を思っているの？
どうしてそんなに寂しそうな瞳をしているの
何かあるの？
どうしてそんなに悲しそうな声を出すの
まだこの時は全然わからなかった
カレが・・・
次の春を迎える頃
私は全てを知ることになるの・・・
余りにも残酷でだけど突き刺さる程に
疑いのないような事実をこの目で
聞き覚えのないメロディーが鳴り出して
少しだけ画面と睨めっこした後に
めがねくんが話し始めていてた
「ヒョン・・・あーっ・・・はい・・・」
もう・・・行かせてあげなくちゃ
きっとカレのことを
周りが放っておかないだろうから
《車乗っていく？》
そう声を掛けると
「どうしても無理ですか？」
《えっ？》
「あの・・・その・・・」
「今から2人で抜け出したり・・・」
「ダメ・・・・・ですよね・・・・・」
《ダメじゃないよ》
《だけど、今日は私運転手なんだ(笑)》
「運転手・・・ですか？」
《家族のね・・・皆を送り届けなくちゃ》
ごめんねとはどうしても言いたくなくて
もう少しだけあとほんの少しだけ
話してたくて、そばに居たくて・・・
それに
そう思ってくれたことがとっても嬉しくて
「ごちそうさまでした」
「嬉しかったです」
「また来週会社で会えますよね」
「運転はくれぐれも気を付けて下さい」
だったら今日は我慢します
そう言ったあとも
たくさん優しい言葉をかけてくれるカレ
どんどん離れ難くなってしまう
ビビちゃんの頭をたくさん撫でて
お別れを言った後に
もう一度だけ
《今日はありがとう》
そう言って戻ろうとすると
「Aヌナ！」
「まだ言いません」
「だけど」
「必ず近いうちに話しますから」
すっかり辺りは
橙色の空に変わっていっている
真夏の始まりを知らせるような
虫の音や映え渡るグリーンの絨毯
そっと目を閉じて
思いがけない
だけど
忘れらなくなりそうな1日を
そっと大切に胸に終い込む
家族を乗せて走らせる車の中で
繰り返し繰り返し
カレの言葉を
思い返していた
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作者名：くじら | 作成日時：2017年5月15日 18時
