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◆朧気で、曖昧な。 ページ26

その後は、意外と普通の話題で普通にお酒を酌み交わした。

私の話だけでは詰まらないから、太宰さんの話も聞いてみて私にとって、今日の呑みの席はかなり有意義な場になった。

支払いは彼がしてくれて、流石に悪いと断ったのに、なんでも国木田さんに私へのお詫びをするようにときつく言われたらしい。

あの日の夜勤のことだろうか。

私に皺寄せがいったと感じているようで、私は財布すら出させて貰えなかった。

諦めてお礼を言って、私達は寮へ帰る。

まだ酔いで熱い頬を、涼しげな風が撫でた。

昼間は暖かくなってきたけれど、まだまだ夜は少し肌寒い。

暗くて静かで、その所為か隣を歩く太宰さんも先程より口数が減っていた。

でも私は、暗くて静かなのも含めて夜が好きだった。

朝より夜が好きだった。

夜勤は大変なこともあるけれど、夜が好きだからそれなりに耐えられる。

いつも喧騒だらけのこの街が、全然違う顔を見せる穏やかな真夜中や夜明け前。

勿論、夜間に探偵社が必要とされるようなことが起きることもあるけれど、普段の夜勤はいつもの街の雰囲気とは切り離されたように感じるから不思議なもので魅力を感じてしまう。

あと、もう一つ。

夜空も好きだ。

といっても私は雨女の節があるから曇りや雨も多いのだけれど、夜空は星が見えて好きだ。

今日は月が出ている。

輪郭がぼやけた朧月。


「私は先程から考えているのですが、」


不意に太宰さんが口を開くものだから少し驚いて月から彼の顔に視線を向ける。

何となくだけれど声の調子が戻っていたから、私の話なんだろうと察した。


「Aさんの思う救済は、意外と脆いのではないかと。…いえ、先程は私も同意しましたが、でも記憶とは本当に完全に消せるものでしょうか」


私は頷いて答える。


「記憶はとても複雑に絡み合っています。私の異能力では何かの拍子に思い出されることもあります。…消しても生まれるもの、それが記憶だと今は気付きました」


当時は気付けなかったこと。

忘れる、ということはとても曖昧なことだった。

だから私の異能力は役立たずなのであって。

なんだか分からないけれど少し自嘲的に笑っていたのだと思う。

暗くても太宰さんには見えていたようだ。


「完全な異能力は存在しませんよ」


自意識過剰でも労いの言葉として受け取ってしまう。

ふと彼の声が明るくなった。


「探している方、見つかるといいですね」


頷いたけれど俯いた私の顔は見えなかっただろう。

◆そして、更け行く。→←◆興の夜。



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(プロフ) - 蒼霧零夜さん» 初めまして、いつもありがとうございます!このような稚拙な作品ながら楽しんで頂けているようで非常に嬉しいです!後半に突入しましたので最後まで楽しんで頂けるように頑張ります! (2019年7月14日 19時) (レス) id: 1ae1c9db61 (このIDを非表示/違反報告)
蒼霧零夜(プロフ) - 初めまして、蒼霧零夜です。何時も楽しくこの作品を読ませて頂いています。これからも、更新を楽しみに待っています! (2019年7月14日 19時) (レス) id: 1854068e39 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - あざる!さん» ご指摘くださりありがとうございます。私が操作している訳ではないのですが、更新するとそうなってしまうようです。今まで指摘もなくこちらとしましても特別不便なことはないので放っておいていました。正しい作成日時はこのページの一番下に記されております。 (2019年7月6日 22時) (レス) id: 1ae1c9db61 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 草神 桜月さん» 嬉しいです!イメージは日常なのであまり勢いづかないように書くよう心がけています。勿体無い程のコメントで非常恐縮です。ありがとうございます! (2019年7月6日 22時) (レス) id: 1ae1c9db61 (このIDを非表示/違反報告)
あざる! - いつも新着順に乗ってるんですけど、どうやってるんですか? (2019年7月6日 21時) (レス) id: bcf0550a7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年2月26日 17時

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