◆消費の代償。 ページ24
「但し代価として相手の指定した記憶を消したと同時に、私も不特定である記憶の一つを失います」
これを話した時、今目の前にいる太宰さん同様に社長も驚いていた。
社長が私を誘ってくれたのは、本当に親切が大きいと思う。
ヨコハマにはポートマフィアの様な組織もあって、此処だけでなく裏社会では私の異能力は簡単に利用されてしまう。
私の異能力は酷使すればする程、私自身の記憶が無くなる訳だから私は廃人になってしまう。
そして相手の消す記憶を指定することは出来ても、私の消える記憶は指定出来ないから必ずしも、重大なことを忘れる訳ではない。
例えば同僚の顔、鍵を置いた場所、友人の誕生日。
これならまだ良い方で逆を言えば、大切なことを忘れてしまうこともある。
社長は、悪人に利用されることや、そして重大な記憶を失うのを防ぐ為に入社と同時に異能力を使わないことを私に約束させた。
私は何処か危機感というものが薄くて、社長がしっかり忠告して定期的に確認をしてくれているからこそ此処数年間は異能力を使うことが全く無かった。
とても感謝している。
それでも私の異能力は一つだけ、ルールがあって相手が消したい記憶が大きな記憶であればある程…つまり、今後の生活や人生に影響を与える程の出来事であればある程に私が失う記憶もそれに比例する。
尚更、利用される訳にはいかない。
何か大きな事を揉み消す為に使われでもしたら、とんでもなく重要な記憶を私は失ってしまう。
社長は念を押して私に手帳を渡した。
時が来て此処から離れることがあったり、どうしようもなく異能力を使わなければならない状況が来た時の為に、何か忘れたくないことは記入するようにと。
私は言い付けを守って今でも使い続ける手帳があるし、必ず持ち歩くようにしている。
人間は何かの拍子に記憶を失ってしまうこともきっとあるだろうから。
…流石にそれは創作小説の読みすぎかもしれないけれど。
「太宰さんは忘れたい記憶はありますか？」
誰にでもあるものかもしれないけれど…判断を誤ることが無いこの人にもあるのかと私は素朴に疑問に思う。
「ありましたよ、苦しくて早く忘れてしまいたいと思った記憶」
彼の視線が落ちる。
思い出したくないことを思い出させるような、配慮の無い質問だったと気づいて、私は謝罪を口にしようとした。
でもそれより先に太宰さんが口を開いた。
私は察知した。
彼の表情が思ったよりずっと柔らかいことに。
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柏(プロフ) - 蒼霧零夜さん» 初めまして、いつもありがとうございます！このような稚拙な作品ながら楽しんで頂けているようで非常に嬉しいです！後半に突入しましたので最後まで楽しんで頂けるように頑張ります！ (2019年7月14日 19時) (
レス) id: 1ae1c9db61 (このIDを非表示/違反報告)
蒼霧零夜(プロフ) - 初めまして、蒼霧零夜です。何時も楽しくこの作品を読ませて頂いています。これからも、更新を楽しみに待っています！ (2019年7月14日 19時) (レス) id: 1854068e39 (このIDを非表示/違反報告)
柏(プロフ) - あざる！さん» ご指摘くださりありがとうございます。私が操作している訳ではないのですが、更新するとそうなってしまうようです。今まで指摘もなくこちらとしましても特別不便なことはないので放っておいていました。正しい作成日時はこのページの一番下に記されております。 (2019年7月6日 22時) (レス) id: 1ae1c9db61 (このIDを非表示/違反報告)
柏(プロフ) - 草神 桜月さん» 嬉しいです！イメージは日常なのであまり勢いづかないように書くよう心がけています。勿体無い程のコメントで非常恐縮です。ありがとうございます！ (2019年7月6日 22時) (レス) id: 1ae1c9db61 (このIDを非表示/違反報告)
あざる！ - いつも新着順に乗ってるんですけど、どうやってるんですか？ (2019年7月6日 21時) (レス) id: bcf0550a7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柏 | 作成日時：2019年2月26日 17時
