《第二話》 ページ4
『(となると残る選択肢は……)』
“私が行くしかない”
Aは嫌々そうに大きなため息をつくとジト目で辺りを見渡す
小さなハンドバッグに茶色のストール、それから匂い消し……
Aはゴソゴソと準備をし始めた
そこから30分後
『完璧』
フフンと誇らしげに姿見に映るのは、金持ちのA……
ではなく、拐っても大した身代金が出なさそうな町娘の姿
Aが本の知識をフル活用して出来た姿だ
できることなら魔法で姿を変えたかったが、姿を変える魔法なんて使ったことがない
渋々、古典的なやり方で妥協した
『じゃあ街に繰り出すか』
Aは広大な邸宅から抜け出た
その１０分後
「A様 いらっしゃいますかー？」
給仕と思わしき少女がAの部屋をノックする
「A様？」
しばらくたっても返事が来ないことに少女は疑問を持つ
試しに手に力を込めれば、ドアはスルリと開いた
「返事がないので入りますね……っていない！？ ちょ、ジャミル！！」
「何なんだ急に……」
Aの姿がないことに驚き、少女は近くに居た少年を呼ぶ
少年は一歩前に出て部屋を見渡す
「……A様は？」
「お食事の準備が出来たから呼んだら、すでにもぬけの殻……」
「ナジュマ、お前はここで待ってろ 俺はA様
まるで他にも消えた人がいるかのような言葉に少女は嫌な想像をしてしまう
「まさかA様
すると少年は苦虫を潰したような顔をして頷く
「カリムのやつも……絨毯と一緒にまたどこかに出かけたらしいんだ……」
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作者名：好好爺 | 作成日時：2023年12月1日 18時
