《第五話》 ページ6
「それにしても学園長はどこに行っちゃったのかしら? 式の途中で飛び出して行っちゃったけど……」
その美しい男はため息をつき呆れる。
リリアと別れたAもそのセリフのでようやく学園長の存在を思い出した。
なかなかに酷い男である。
「職務放棄……」
「腹でも痛めたんじゃないか?」
『実はお恥ずかしいことに、歳による腰痛です』
「ひっ、いつからそこに!?」
「まだまだ元気ですが!?」
「あ、来た」
突如、ニュッと会話に参戦したAにタブレット端末は声にならない声を捻り出す。
はっきりと学園長は年寄りと言うAを軽く叱るクロウリー。
その手には狸のようなものが。近くにはミドルスクールくらいの小さな男の子もいた。
例の脱走系新入生かな。初日にしてはいい度胸。Aはじっくりとその男の子を観察する。
「まったくもう。新入生が1人足りないので探しに行っていたんです。
さあ、寮分けがまだなのは君だけですよ。狸くんは預かっておきますから、早く闇の鏡の前へ」
クロウリーは男の子を諭して鏡の前まで歩かせる。男の子は言われるがままという感じであった。
「汝の名を告げよ」
「……ユウです」
いつも通りのお決まり文句を見つめる。
どこの寮だろうか。
どうせなら自分の出身寮が良いな、とAは願う。
「ユウ……汝の魂のかたちは…………………………………………わからぬ」
「なんですって?」
「この者からは魔力の波長が一切感じられない……色も、形も、一切の無である。
よって、どの寮にもふさわしくない!」
言い切った闇の鏡にクロウリーは愕然とする。
「魔法が使えない人間を黒き馬車が迎えに行くなんてありえない!生徒選定の手違いなどこの100年ただの一度もなかったはず。一体なぜ……」
『それより学園長、このデカ狸はどういたしましょう』
「あぁ、その問題もありました……」
さらに項垂れるクロウリーを励ますことなくAは預かった狸を見つめていた。
「お、オレ様を離すんだゾ!」
『……。』
煮たら美味しそうなど、たぬき汁などとは微塵も思ってない。
デカ狸から非常食にあだ名を変更しようとするなんてことも考えていない。
……Aの口から垂れるよだれはただの気の所為だ。
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好好爺(プロフ) - 星詠みさん» コメントありがとうございます!!早速更新させていただきました!気づいたら亀更新してしまう作者なので度々教えてくれると助かります……! (9月28日 23時) (レス) id: eeb0faecb7 (このIDを非表示/違反報告)
星詠み(プロフ) - 続きいつでも待ってます‼︎ (9月28日 22時) (レス) @page17 id: 674129e800 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:好好爺 | 作成日時:2023年9月19日 14時